在宅ワークのデスクは奥行き何センチ必要?国の基準は60cmではない

在宅ワークのデスクは奥行き何センチ必要?国の基準は60cmではない デスク環境

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デスクの奥行きは60cm前後が基準です——調べると、どの記事にもそう書いてあります。ノートPCなら50cm、モニターを置くなら60cm、27インチなら70cm。数字はかなり具体的です。

ただ、読んでいて気になることがありました。誰が決めた基準なのか、どこにも書いていないのです。

そこで、実際に国のガイドラインを読んでみました。厚生労働省が出している、パソコン作業の労働衛生に関する文書です。

結論から書きます。机の奥行きについて、国は数値を1つも定めていません。

この記事では、その一次資料に何が書いてあるのかを示したうえで、自分に必要な奥行きの出し方を説明します。60cmという数字を借りるより、そのほうが確実です。

国が決めているのは「視距離40cm以上」だけ

まず、根拠にした文書をはっきりさせておきます。

厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(基発0712第3号 令和元年7月12日/一部改正 基発1201第7号 令和3年12月1日)です。2002年に出された「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を、2019年に全面改正したものにあたります。

なお、これは事業者向けの労働衛生管理の文書です。会社が従業員の作業環境を整えるときの指針であって、自宅で働く個人に何かを義務づけるものではありません。ただ、「国が示している考え方」として参考にする価値はあります。

ディスプレイについて書かれていること

原文を引用します。

(イ)おおむね40cm以上の視距離が確保できるようにし、この距離で見やすいように必要に応じて適切な眼鏡による矯正を行うこと。

(ロ)ディスプレイは、その画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることが望ましい。

「おおむね40cm以上」。ガイドラインの中で距離について書かれている数字は、これだけです。

そして注意したいのは、これが下限だということです。「40cmが理想」ではなく「40cmより近づけるな」という書き方になっています。

机について書かれていること

では机はどうか。原文はこうです。

(イ)作業面は、キーボード、書類、マウスその他情報機器作業に必要なものが適切に配置できる広さであること。

(ロ)作業者の脚の周囲の空間は、情報機器作業中に脚が窮屈でない大きさのものであること。

(ハ)…床からの高さは作業者の体形にあった高さとすること。

読んでのとおりです。cmの数値が、1つもありません。

「必要なものが適切に配置できる広さ」「体形にあった高さ」。これが国の言い方です。つまり、正解の数字は人によって違うというのが公式見解だということになります。

「60cm」はどこから来たのか

ここまでを踏まえると、「奥行き60cmが基準」という言い方は正確ではありません。それは業界で共有されている目安であって、公的な基準ではないからです。

目安が悪いと言いたいわけではありません。多くの人にとって、だいたい合う数字だとは思います。ただ、自分に当てはまるかどうかは別の話です。そして、それを確かめる方法はあります。

視距離40cmと、机の奥行き40cmは別のもの

もうひとつ、上位の記事によく見られる混同があります。視距離と奥行きを、同じ数字として扱っていることです。

視距離は50〜70cmが理想、だから奥行きは60cm——この論法は成り立ちません。

机を横から見てください。目から天板の奥まで、間にはこれだけのものが入ります。

  • 目 →(手前の帯:手のひらを置く場所)
  • キーボード
  • →(隙間)
  • モニタースタンドの底面
  • モニターの厚み
  • → 天板の奥

視距離は「目と画面の距離」です。奥行きは「天板の手前から奥までの長さ」です。測っている区間が違います。

だから、視距離が40cm確保できていても、天板の奥行きが40cmでは足りません。逆に、奥行きが60cmあっても、モニターを手前に置けば視距離は40cmを切ります。

2つは別々に確認する必要があります。

自分の奥行きを出す(メジャー1本でできます)

やり方は単純です。今の机の上で測れます。

手順

  1. モニタースタンドの底面の奥行きを測る(ノートPCだけなら本体の奥行き)
  2. キーボードの奥行きを測る
  3. 手前の帯を決める。手のひらを机に置いて、手首から指先までが乗る長さ
  4. この3つを足す

出た数字が、あなたに必要な最低限の奥行きです。誰かの60cmより、この数字のほうが正確です。

出た数字で、目と画面が40cm以上離れるか確認する

次に、その配置で座ってみて、目と画面が40cm以上離れているかを測ります。ここもメジャーで実測してください。感覚だと、かなりずれます。

40cmを割っている場合、机が小さいのではなく置き方の問題であることが多いです。モニターを天板の奥へ下げるだけで解決することもあります。それでも足りなければ、次の章の方法を試してください。

なお、これは下限を割っていないかの確認です。「40cmちょうどが理想」という意味ではありません。画面が大きいほど視界に収めるために距離が要るので、自分の画面サイズで見づらさや首の動きを感じるなら、下限を満たしていても離すべきです。

実例:奥行600mmの机

具体的な寸法を持つ机で見てみます。

幅1200×奥行600×高さ720mmの平机です。天板はメラミン樹脂化粧板で、配線を通すスリットが付いています。

この机の奥行きは600mm、つまり60cmです。ここで大事なのは、「60cmあれば足りるか」ではなく、さっき出した自分の合計が600mmに収まるかという見方をすることです。

外付けモニターを使っていて、スタンドの底面が20cm、キーボードが15cm、手前の帯が15cmなら、合計50cm。600mmの机なら余裕があります。逆に、大きめのモニターと大きめのキーボードを使っているなら、60cmでも足りないことがあります。

自分の数字を持っていれば、この判断が一瞬でできます。

奥行きは「節約」できる

必要な奥行きが足りない場合、机を買い替える前にできることがあります。足していた要素を、消してしまうという方法です。

スタンドの底面を消す

合計の中でいちばん大きいのは、たいていモニタースタンドの底面です。ここを浮かせてしまえば、その分がまるごと不要になります。

しかも、副次的な効果があります。浮かせると高さと角度が自由になるので、国のガイドラインが言う「画面の上端が眼の高さとほぼ同じか、やや下」という条件も、同時に満たしやすくなります。奥行きと高さの2つが、1つの手で片付きます。

キーボードを机の下に逃がす

使っていない時間だけでも、キーボードを天板の下に収められれば、その分の奥行きが実質的に空きます。

それでも足りないなら

奥行きを節約してもなお足りない場合は、机そのものを選び直すことになります。ただし、狭い部屋では幅と奥行きが連動するという別の問題が出てきます。ここは選び方の話として整理しています。

高さは、奥行きより先に効く

最後に、奥行きより優先度の高い寸法に触れておきます。高さです。

国のガイドラインは、机の高さについても「作業者の体形にあった高さ」としか書いていません。奥行きと同じく、規格値は存在しないわけです。

さきほどの机の高さは720mmでした。これは事務机として一般的な高さですが、万人に合う高さという意味ではありません。国が「体形にあった高さ」と言っている以上、720mmが自分に合う保証はどこにもない、ということになります。

背が高い人の場合、一般的な高さでは低すぎることがあります。その場合の考え方は別に整理しています。また、机を変えなくても、椅子側の調整でかなり吸収できることもあります。

まとめ|60cmを信じる前に、メジャーを持つ

  • 国が定めているのは視距離「おおむね40cm以上」という下限だけ。机の奥行きに公的な数値は無い
  • 「60cm」は業界の目安。悪くはないが、自分に合う保証はない
  • 視距離と奥行きは別のもの。間にモニター・キーボード・手前の帯が入る
  • 自分の奥行き=スタンドの底面 + キーボード + 手前の帯。メジャー1本で出せる
  • 足りなければ、机を買う前にモニターを浮かせて底面を消す

「何センチ必要ですか」という問いに、国は数字で答えていません。答えているのは「あなたの体に合った寸法で」ということだけです。少し不親切に聞こえますが、それがいちばん正確な答えなのだと思います。

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参照した公式情報(取得日 2026-08-30)

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