在宅ワークの家庭用プリンター選び方|書類印刷向けコンパクト機の4つの軸

在宅の書類印刷に使う家庭用プリンターの選び方|年賀状向けとは分けて考える4つの軸 PC・周辺機器

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在宅ワークの家庭用プリンター選び方|書類印刷向けコンパクト機の4つの軸

在宅で事務作業をしたり、副業をしたりしていると、たまに紙で書類を出したい場面があります。申込書に記入して返送する、契約書を刷って保管する、申請の控えを紙で持っておく。頻度は高くないけれど、必要になると急にプリンターがほしくなる、というのがこの用途です。

ところが家庭用プリンターのおすすめを検索すると、上位に出てくるのは年賀状づくりや写真印刷を前提にした記事か、通販サイトの製品一覧です。写真がきれいに出るか、はがきに強いか、といった軸が中心で、在宅ワークで書類を刷りたい人が見るべき軸とは少しずれています。

この記事では、在宅の書類印刷という使い方に絞って、家庭用のコンパクトな複合機をどう選ぶかを整理します。見る軸は4つ(インク方式・サイズと設置・機能・維持コスト)で、そのうえで月に何枚刷るかから方式を逆算する早見表、置き場所と騒音の考え方、スマホやパソコンからの印刷とセキュリティ、そしてそもそも買わずに済ませる選択肢まで扱います。

なお、この記事では特定の金額は書きません。価格は取得した時点でしか正しくないためで、金額そのものは商品カードに表示される取得時点の情報をご確認ください。代わりに、価格が変わっても使える判断の構造のほうを説明します。

  1. まず決めるのは、書類中心か写真・年賀状中心か
    1. 在宅の書類印刷で本当に必要なこと
    2. 年賀状・写真中心なら見る軸が変わる
    3. 兼用したい人の考え方
  2. 軸1:インク方式で刷り続けたときの負担が決まる
    1. カートリッジ式が向く人
    2. 大容量タンク式(エコタンク方式)が向く人
    3. モノクロレーザーという選択肢
    4. 染料インクと顔料インクの違い
    5. カタログの印刷コストは測定条件とセットで読む
  3. 軸2:サイズと設置は使用時の寸法で考える
    1. 収納時の寸法だけで判断すると入らない
    2. 給紙方式で必要な余白が変わる
    3. 置き場所別のチェック手順
    4. 対応用紙サイズと給紙容量
  4. 軸3:機能は使う場面から逆算する
    1. スキャンとコピー(複合機かどうか)
    2. 自動両面印刷
    3. ADF(自動原稿送り装置)
    4. Wi-Fi とスマホ印刷
    5. FAX機能は要るか
  5. 軸4:維持コストは金額より構造で見る
    1. かかり続けるものの内訳
    2. 使わない期間があるほど不利になる理由
    3. 互換インクをどう考えるか
    4. メーカーごとの傾向をどう読むか
  6. 月の印刷枚数別の向き不向き
    1. 月に数枚まで:たまに一枚刷るだけ
    2. 月に十数枚から数十枚:在宅の書類が定期的にある
    3. 月に百枚を超える:資料を束で刷る
  7. 置き場所と騒音・排熱
    1. 音が気になるのは印刷中だけではない
    2. 熱・ホコリ・直射日光
    3. 配線と電源の確保
  8. スマホとPCからの印刷設定、在宅ワークのセキュリティ
    1. スマホから刷るまでの流れ
    2. PCから刷るときに見る設定
    3. 会社の書類を自宅で刷るときの注意
  9. 印刷しないという選択肢
    1. コンビニのネットプリントで足りる場合
    2. PDFのまま完結させる
    3. スキャンだけ欲しいとき
  10. 書類中心の在宅ワークに合う複合機
    1. まず起点にしやすいコンパクトなカートリッジ式
    2. 自動両面印刷まで備えたコンパクト機
    3. 枚数が多いならエコタンク方式
  11. 買う前に多い失敗パターン
  12. 筆者の判断基準
  13. よくある質問
    1. プリンターの寿命はどれくらいですか
    2. 使わない期間が長いとどうなりますか
    3. 古いプリンターはどう処分すればよいですか
    4. レーザープリンターは家庭で使えますか
  14. 参照した公式情報(取得日)
  15. まとめ

まず決めるのは、書類中心か写真・年賀状中心か

プリンター選びが分かりにくいのは、写真向けの良さと書類向けの良さが同じ土俵で語られるからです。最初に、自分の使い方が写真・年賀状中心なのか、書類中心なのかを決めてしまうと、見るべき項目がぐっと絞れます。

在宅の書類印刷で本当に必要なこと

在宅の書類印刷が中心なら、優先したいのは次の3点です。

  • 必要になったときに、待たされずに白黒中心の文書が出ること
  • 文字と細い線がにじまず読めること(提出物・保管物として成立すること)
  • 刷った書類をスキャンやコピーで手元に残せること

逆に、写真の発色、はがきの連続印刷への強さ、ディスクレーベル印刷といった要素は、書類中心の人にとっては二番目以降の話になります。ここを最初に切り分けておかないと、必要のない機能に予算を取られ、肝心の使い勝手が落ちます。

年賀状・写真中心なら見る軸が変わる

写真・年賀状が主目的なら、インクの色数、写真用紙への対応、フチなし印刷、はがきの給紙枚数といった項目が前に出ます。書類向けの機種と比べて本体が大きくなりやすく、機能も増えるため、在宅の書類印刷だけが目的の人には過剰になりがちです。

兼用したい人の考え方

普段は書類、年末だけ年賀状という兼用は十分現実的です。その場合は普段使いの書類側を基準に選び、年賀状は妥協できる範囲かを確認するという順番にします。年に一度の用途のために本体を大きくすると、残りの十一か月ずっと置き場所の負担を払うことになります。年賀状は宛名だけ自宅で刷って写真面は印刷サービスに出す、という分担も選択肢です。

軸1:インク方式で刷り続けたときの負担が決まる

家庭で選べる方式は、大きく分けてインクジェットのカートリッジ式、インクジェットの大容量タンク式、そしてレーザーの3つです。本体を買った瞬間の負担ではなく、刷り続けたときの負担がここで決まります。

カートリッジ式が向く人

交換用のインクカートリッジを差して使う、もっとも一般的なタイプです。本体が手ごろで、コンパクトな機種が多いのが利点です。一方で、1枚あたりのインク負担は大容量タンク式より大きくなります。

月に数枚から十数枚という使い方なら、このタイプで足ります。年に何度か書類を刷るだけの人が大容量タンク式を買うと、本体の分を刷って取り返す前に買い替え時期が来てしまいます。

大容量タンク式(エコタンク方式)が向く人

本体のタンクにインクを補充して使うタイプです。本体の負担は上がりますが、1枚あたりのインク負担が下がり、補充の頻度も減ります。

たとえば後述するエプソンのエコタンク方式のモデルは、使い切りサイズのインクでA4カラー文書を約1000ページ、増量サイズで約3700ページ印刷できるとされています。毎月まとまった枚数を刷る、あるいは今後増えそうな人ほど、この方式の効きが大きくなります。

モノクロレーザーという選択肢

白黒の文書だけを、まとまった枚数、速く刷りたいなら、モノクロレーザーも候補に入ります。トナーを使うため水濡れに強く、印刷を始めてからの速度も出ます。

ただし家庭用としては次の点に注意が必要です。

  • 本体が大きく重くなりやすい(設置場所の制約が強くなる)
  • カラー印刷が必要な場面では使えない、またはカラー機になって本体がさらに大きくなる
  • 定着に熱を使うため、印刷時の消費電力が大きくなりやすい

在宅の書類印刷で白黒しか刷らないと言い切れるならレーザーは有力ですが、申込書にカラーの記入見本があったり、子どもの学校のプリントを刷ったりする可能性があるなら、カラーが出せるインクジェットの複合機のほうが取り回しは楽です。

染料インクと顔料インクの違い

インクジェットのインクには、紙に染み込む染料インクと、紙の表面に定着する顔料インクがあります。ざっくり言えば、写真の発色は染料、文字のくっきりさと水への強さは顔料が得意です。

書類を刷る用途では、黒に顔料インクを使っている機種だと普通紙でも文字がシャープに出ます。この記事で紹介するキヤノンのモデルは染料3色と顔料1色の4色構成、エプソンのコンパクトモデルも染料3色と顔料1色の独立型インクという構成です。

なお、独立型インクとは色ごとにインクが分かれている構成のことです。減った色だけを替えられるので、書類ばかり刷って黒だけが早く減る使い方とは相性がよくなります。

カタログの印刷コストは測定条件とセットで読む

ここは多くの記事で飛ばされる部分です。カタログや通販ページに載っている1枚あたりのインクコストは、メーカーが勝手に決めた数字ではなく、共通の測定ルールに沿って出した数字です。

キヤノンは公式の測定環境ページで、普通紙のインクコストについて、電子情報技術産業協会(JEITA)が定めた家庭用インクジェットプリンターの印刷コスト表示に関するガイドラインに従って表記していること、印字可能枚数の測定に ISO/IEC 24711(測定方法)、カラー文書は ISO/IEC 24712、モノクロは ISO/IEC 19752(測定画像)を使っていることを公開しています(測定環境について PIXUS/TR/PROシリーズ・2026-09-07 取得)。印刷スピードについても ISO/IEC 24734 ほかの国際規格で測っていると明記されています。

エプソンも同様に、各種数値計測条件(2026-09-07 取得)で、カラー文書のコストは同じ JEITA ガイドラインと ISO/IEC 24711・24712、モノクロは ISO/IEC 19752 にもとづくこと、消耗品の価格は特定時点の直販価格を基準にしていること、インク交換の測定は初回セットアップ用ではなく2回目以降の交換用インクで算出していることを公開しています。

ここから読み取れる実務的なポイントは3つです。

  1. メーカーが違ってもコストの測り方は共通なので、カタログ値どうしの比較には意味がある
  2. ただし測定は決められたテスト画像で行われる。文字だけのA4を刷る人と、写真や図表が多い資料を刷る人では、実際の減り方が変わる
  3. 消耗品の価格は時点の値なので、カタログ値は今後もこの金額という約束ではない

つまりカタログ値は機種どうしを比べる物差しとしては信頼できるが、自分の支払額の予測としてはそのまま使えない、ということです。だからこの記事では金額そのものではなく、次に述べる構造で判断することをおすすめしています。

軸2:サイズと設置は使用時の寸法で考える

在宅ワークの机まわりはただでさえ物が多く、プリンターは意外と場所を取ります。ここでよくある失敗が、カタログの外形寸法だけを見て棚の幅と比べてしまうことです。

収納時の寸法だけで判断すると入らない

プリンターは、使うときに給紙トレイと排紙トレイが前後に開きます。つまり動作中に必要な奥行きは、しまっているときより大きくなります

たとえばこの記事で紹介するエプソンのコンパクトモデルは、収納時と使用時で必要な寸法が次のように変わります。

状態 幅(cm) 高さ(cm) 奥行き(cm)
収納時 37.5 17.0 30.0
使用時 37.5 24.2 57.8

幅は変わりませんが、奥行きはおよそ二倍近くになり、高さも上がります。奥行きに余裕のない棚にぴったり入ると思って買うと、実際にはトレイが開かず、毎回本体を引き出して使うことになります。

購入前のチェックは、次の順番で行うと漏れません。

  1. 置きたい場所の幅・奥行き・高さを実測する
  2. 候補機種の使用時の寸法を仕様ページで確認する(記載がなければ収納時の奥行きに大きめの余裕を見る)
  3. 前面(排紙側)と背面(給紙側)に手が入るかを確認する
  4. 上ぶた(スキャナー部)を開ける高さがあるかを確認する

四番目は複合機で見落としやすい点です。棚の中に入れると、原稿を置くためのふたが開かず、スキャンとコピーが使えなくなります。

給紙方式で必要な余白が変わる

紙をセットする位置は、本体の背面から差し込む背面給紙と、前面のカセットに入れる前面給紙に分かれます。

  • 背面給紙: 本体の奥行きは抑えられるが、紙が背面上部に立つため後ろと上に空間が要る。棚の中や壁ぴったりの設置には向かない
  • 前面給紙: 用紙をしまったまま使えるので棚に収めやすいが、カセットの分だけ本体の奥行きや高さが増えやすい

棚に入れて使いたいなら前面給紙、机の脇に置いて上が開いているなら背面給紙でも問題ない、という切り分けになります。

置き場所別のチェック手順

置き場所 特に確認すること
棚の中 使用時の奥行き、上ぶたが開く高さ、給紙方式、放熱のすき間
机の上 作業スペースを削らないか、排紙が手前に落ちてこないか、振動が机に伝わらないか
床置き ホコリを吸わないか、足元の配線と干渉しないか、紙を取るときにかがむ手間
別の部屋 無線が届くか、印刷のたびに取りに行く手間が許容できるか

プリンターを置くと机まわりが散らかりやすくなるので、置き場所と一緒にデスクの上を散らかさない方法も見ておくと片づきます。

対応用紙サイズと給紙容量

在宅の書類印刷なら、A4が刷れれば大半は足ります。確認しておきたいのは次の2点です。

  • 下限のサイズ: 名刺やはがきを刷る予定があるか。たとえばこの記事のキヤノンのモデルはL判・2L判・KG・スクエア・六切・A6からA4・リーガル・レターに対応し、エプソンのコンパクトモデルはカードや名刺からA4に対応しています
  • 給紙容量: 一度にセットしておける枚数。キヤノンのモデルは背面トレイにA4を最大60枚、ハガキを最大20枚まで入れられます

給紙容量が小さいと、まとまった枚数を刷るときに途中で紙を足す手間が生まれます。逆に、たまに数枚刷るだけなら容量はほとんど問題になりません。A3を刷る必要があるかだけは先に決めておくと、候補が一気に絞れます。A3対応機は本体が明確に大きくなるためです。

軸3:機能は使う場面から逆算する

機能はカタログに並んでいる順ではなく、自分がその機能を使う場面を言えるかで判断します。場面が言えない機能は、たいてい使いません。

スキャンとコピー(複合機かどうか)

在宅で書類を扱うなら、印刷だけの単機能機より、スキャンとコピーができる複合機が便利です。理由は印刷そのものより、その周辺の作業にあります。

記入して提出する書類は、送る前に控えを残しておきたいことが多く、コピーやスキャンができると紙とデータの両方で保管できます。開業届や確定申告のように、出した書類を手元に残す前提の手続きでは特にそうです。副業を始めるときの書類まわりは副業で開業届は出すべきか副業が住民税で会社にバレる仕組みと対策でも触れていますが、控えをスキャンして残せると、後から見返すときに探しやすくなります。

なお、紙をデータにする作業そのものが主目的なら、複合機ではなく専用のスキャナーのほうが速くて省スペースです。その比較は在宅の書類電子化に使うスキャナーの選び方にまとめています。

自動両面印刷

用紙の裏表に自動で刷る機能です。地味ですが、在宅ワークでは効きます。

  • 紙の消費が減る(同じ資料を刷るときの枚数が半分に近づく)
  • 手で裏返してセットし直す手間と、向きを間違える失敗がなくなる
  • 資料の束が薄くなり、保管とファイリングが楽になる

複合機・プリンターのメーカーであるブラザーも、自動両面印刷で使える用紙のサイズと種類、プリンタードライバーの設定方法はモデルによって異なるとしています。つまり自動両面印刷に対応と書かれていても、どの紙でも使えるとは限りません。普通紙のA4で使えれば、在宅の書類用途としては十分です。

ADF(自動原稿送り装置)

複数枚の原稿を重ねてセットすると、順に読み取ってくれる機構です。毎回ガラス面に一枚ずつ置いてふたを閉じる作業から解放されます。数十ページの資料をスキャンする機会があるなら、あるかないかで作業時間が大きく変わります。

ブラザーの公式サポートは、ADF にセットできる原稿の条件として、カールした用紙、しわのある用紙、折ってある用紙、破れた用紙、ホチキスで留めた用紙、クリップやのり、テープの付いた用紙は使わないよう案内しています(ADFに原稿をセットする・2026-09-07 取得)。

在宅で扱う書類は、封筒から出した折りぐせのある紙や、ホチキスで留まった契約書であることが多いはずです。ADF は便利ですが、折りぐせを伸ばす、ホチキスを外すというひと手間は前提だと考えておくと、期待とのズレがありません。

コンパクトな家庭用機には ADF が付かないものが多く、付くと本体が一回り大きくなります。たまに一枚か二枚スキャンするだけなら、無くても困りません。

Wi-Fi とスマホ印刷

在宅の書類は、スマホに届いたPDFをそのまま刷りたい場面が意外と多いものです。学校や役所からの連絡、申込書のPDF、メールに添付された資料。パソコンを立ち上げずに刷れると、手間がぐっと減ります。

確認したいのは、無線LANに対応しているかと、スマホの専用アプリが用意されているかの2点です。エプソンは公式の製品ページで、スマホにある写真やPDFなどの文書をすぐ印刷でき、QRコードで接続も簡単だと案内しています(カラリオ EW-456A 製品ページ・2026-09-07 取得)。

無線で使えると、プリンターを机の上ではなく棚の上や別の部屋に置けるようになり、置き場所の自由度が上がります。有線のUSBだけの機種は本体をパソコンの近くに置く必要があり、在宅ワークの机では窮屈になりがちです。

FAX機能は要るか

家庭用の複合機には FAX 付きと FAX なしがあります。取引先とのやり取りで FAX を求められる業種でなければ、無くて困ることはほとんどありません。FAX が付くと本体に受話器や操作パネルが増え、サイズと価格に効いてきます。必要かどうかを先に決めることで、候補がかなり絞れます。

軸4:維持コストは金額より構造で見る

価格は変わりますが、何にお金がかかり続けるかという構造は変わりません。ここを押さえておくと、値段表を見なくても判断できます。

かかり続けるものの内訳

項目 発生のしかた 効いてくる条件
インク・トナー 刷った量に応じて 印刷枚数が多いほど
用紙 刷った枚数に応じて 片面印刷ばかりだと増える
クリーニングで使うインク 使っていない期間にも 使用頻度が低いほど不利
電気 待機と印刷 常時電源を入れている場合
本体の買い替え 数年単位 使用年数が短いほど一年あたりが重い

多くの記事は一番目しか扱いません。しかし在宅ワークでたまにしか刷らない人にとって効いてくるのは三番目と五番目です。

使わない期間があるほど不利になる理由

インクジェットは、ノズルからインクを噴き出して印刷します。長く使わないとノズル内のインクが乾いて詰まりやすくなるため、多くの機種が電源投入時や定期的にクリーニング動作を行い、そのときにインクを消費します。

つまり一枚も刷っていないのにインクが減るという現象が起こります。年に数回しか使わない人がインクが空だったという経験をしやすいのはこのためです。

対策として一般に言われるのは次の3つです。

  • 電源プラグを抜いたままにせず、本体の電源ボタンで切る(自動メンテナンスが働く状態を保つ)
  • 月に一度でよいので、カラーを含む一枚を刷る
  • 長期間まったく使わないと分かっているなら、そもそもインクジェットを買わない

三番目は身もふたもありませんが、重要な判断です。年に二回か三回しか刷らないなら、後述する印刷しないという選択肢のほうが現実的なことがあります。

互換インクをどう考えるか

メーカー純正ではないインクは選択肢としてありますが、メーカーの保証や動作の前提から外れるという点は理解して選ぶ必要があります。純正インクを前提に設計された機種で純正以外を使い、不具合が出た場合の対応はメーカーごとに扱いが異なります。

この記事では、どちらが良い悪いという判断はしません。選ぶ前に、使いたい機種のメーカーが公式に何と案内しているかを確認することをおすすめします。カタログの印刷コスト値は純正インクの価格をもとに算出されているため、互換インクを使う前提でコストを比べると、比較の土台がずれます。

メーカーごとの傾向をどう読むか

どのメーカーが良いかはよく聞かれますが、機種によって性格が違うため、メーカー単位で断定するのは無理があります。代わりに実務的なのは、測定条件を公式に開示しているかを見ることです。

前述のとおりキヤノンとエプソンは、印刷コストと印刷速度の測定に使った規格・用紙・ドライバー設定まで公開しています。ブラザーも自動両面印刷や ADF の使用条件をモデル別にサポートページで示しています。こうした情報が公開されている機種は、買ったあとで思っていたのと違うが起きにくいという意味で選びやすくなります。

月の印刷枚数別の向き不向き

ここまでの4軸を、いちばん実用的な変数である月の印刷枚数にまとめ直します。迷ったらこの表から入ってください。

月の印刷枚数(枚) 向いている方式 複合機の必要性 注意したいこと
0〜5 カートリッジ式の小型機 控えを残すならあり 使わない期間のインク詰まり。買わない選択肢も検討
6〜30 カートリッジ式 推奨 給紙容量は小さくても足りる
31〜100 カートリッジ式または大容量タンク式 推奨 自動両面印刷があると用紙と手間が減る
101〜300 大容量タンク式 推奨 給紙容量と補充頻度を確認
301以上 大容量タンク式またはレーザー 用途による 設置スペースと電源、稼働音を先に確認

月に数枚まで:たまに一枚刷るだけ

このレンジは、本体の負担が軽いカートリッジ式が合理的です。大容量タンク式の利点は枚数を刷って初めて出るため、この枚数では活きません。

同時に、このレンジはそもそも買わない判断が最も現実的な層でもあります。後述のコンビニ印刷やPDF運用で足りるなら、置き場所とインク詰まりの心配を丸ごと省けます。

月に十数枚から数十枚:在宅の書類が定期的にある

在宅ワークで書類仕事がある人の多くはここに入ります。カートリッジ式のコンパクトな複合機がちょうど合います。この帯から自動両面印刷の効果が体感できるようになるので、対応機を選んでおくと用紙と手間が減ります。

月に百枚を超える:資料を束で刷る

このレンジになると、一枚あたりの負担と補充の手間が効いてきます。大容量タンク式を検討する価値が出ます。白黒だけで済むなら、モノクロレーザーも候補です。合わせて、給紙容量、稼働音、設置スペース(使用時の寸法)を先に確認してください。

置き場所と騒音・排熱

在宅ワークでは、プリンターが仕事中の環境の一部になります。ここは購入後に変えにくいので、先に考えておく価値があります。

音が気になるのは印刷中だけではない

プリンターの音には、印刷中の動作音のほかに、電源投入時やメンテナンス時のクリーニング音があります。後者は自分が操作していないタイミングで鳴るため、オンライン会議中に突然始まると気まずいことになります。

対策は次のとおりです。

  • 会議で使う機材(マイク)から離して置く
  • 会議の前に一度電源を入れておき、起動時の動作を済ませておく
  • 静音モードを持つ機種なら設定を確認しておく
  • 棚の中に置く場合も、放熱のすき間は残す

熱・ホコリ・直射日光

インクジェットは熱と乾燥に弱く、レーザーは印刷時に熱を持ちます。共通して避けたいのは、直射日光が当たる窓際、暖房の風が直接当たる場所、床のホコリを吸い込みやすい低い位置です。

紙も同じで、湿気を吸った用紙は給紙トラブルの原因になります。用紙は本体とは別に、密閉できる場所で保管するのが無難です。

配線と電源の確保

意外と詰まるのがここです。無線で接続する機種でも、電源は欠かせません。棚の上に置くなら電源タップの位置、机の下に置くなら足に引っかからない配線経路を先に確認してください。延長コードでたこ足にすると、暖房器具と併用したときに容量の問題が出ます。

スマホとPCからの印刷設定、在宅ワークのセキュリティ

スマホから刷るまでの流れ

機種によって細部は違いますが、おおむね次の流れです。

  1. プリンターを自宅の無線LANに接続する(本体の画面から、またはQRコードで)
  2. スマホにメーカーの公式アプリを入れる
  3. アプリからプリンターを検出して登録する
  4. 刷りたいPDFや写真をアプリで開き、用紙サイズと部数を指定して印刷する

つまずきやすいのは一番目です。スマホとプリンターが同じ無線LANにつながっている必要があります。自宅のルーターが二つの周波数帯を別々の名前で出している場合、スマホ側が片方、プリンターがもう片方につながっていて見つからない、ということが起こります。

PCから刷るときに見る設定

書類印刷で仕上がりに効くのは、次の3つです。

  • 用紙種類: 普通紙を選ぶ。写真用紙のままだとインクを多く使い、乾きも遅くなる
  • カラーとモノクロ: 白黒でよい書類はモノクロ指定にする。カラーインクの消費を抑えられる
  • 両面印刷: 対応機なら長辺とじを既定にしておくと、資料が読みやすくまとまる

提出書類では、用紙サイズと余白も確認してください。海外仕様のPDFがレターサイズで作られていると、A4で刷ったときに端が切れることがあります。

会社の書類を自宅で刷るときの注意

在宅勤務で会社の書類を扱うなら、印刷そのものよりも紙になった後の管理が問題になります。総務省はテレワークセキュリティガイドライン(第5版・令和3年5月公表。2026-09-07 取得)を公開しており、在宅勤務における情報の取り扱い、私物機器の管理、クラウドサービス利用時の設定などを整理しています。

実務上、自宅で押さえておきたいのは次の点です。

  • 刷った紙をそのまま放置しない(家族や同居人の目に触れる場所に置かない)
  • 不要になった書類の処分方法を決めておく(家庭用のシュレッダーなど)
  • 会社に印刷そのものが許可されているかを確認する(規程で禁じている職場もあります)
  • プリンターを共有のネットワークに置く場合、誰が印刷できる状態かを把握しておく

具体的な社内ルールは職場ごとに異なります。判断に迷う書類は、自分で決めずに勤務先の情報管理の担当に確認してください。

印刷しないという選択肢

プリンターの記事でこれを書くのは妙ですが、在宅ワークで最も費用対効果が高い選択が買わないことであるのは珍しくありません。判断材料として3つ挙げます。

コンビニのネットプリントで足りる場合

スマホやパソコンからデータを登録し、コンビニの複合機で番号を入力して刷る仕組みです。一枚ごとの支払いになりますが、本体もインクも置き場所も不要です。

向いているのは次のような人です。

  • 印刷が月に数枚以下で、しかも不定期
  • 家に置くスペースがない
  • 急ぎではない(外出のついでに刷れる)

向いていないのは、押印して即返送するような時間の制約がある書類が多い人、そして社外に出せない内容を扱う人です。後者は特に注意が必要で、コンビニの機器を使う以上、データを外部のサービスに預けることになります。

PDFのまま完結させる

そもそも紙にしなくてよいケースが増えています。電子契約に対応した取引先なら押印も紙も不要ですし、確定申告も電子で完結できます。

帳簿や取引データの保存については、国税庁が電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)(2026-09-07 取得)で、電子取引データの保存要件と具体的な対応方法を公開しています。自分の事業でどう保存すべきかは、この一問一答と、必要に応じて税務の専門家に確認してください。この記事では税務上の判断は扱いません。

紙をやめると、印刷そのものだけでなく、保管・検索・処分の手間も一緒に減ります。

スキャンだけ欲しいとき

刷りたいのではなく紙を残したくないのが本当の目的なら、必要なのはプリンターではなくスキャナーです。スマホのカメラでも、書類スキャン向けの機能を使えば台形補正とPDF化ができます。枚数が多いならシートフィード型のスキャナーのほうが速く、置き場所も取りません。

書類中心の在宅ワークに合う複合機

ここまでの軸を踏まえて、書類中心の使い方に合う3タイプを挙げます。いずれもコピーとスキャンができる複合機です。

まず起点にしやすいコンパクトなカートリッジ式

キヤノンのコンパクトな複合機です。解像度は4,800×1,200dpi、インクは4色(染料3色・顔料1色)。給紙は背面トレイで、A4を最大60枚、ハガキを最大20枚まで入れられます。対応用紙はL判・2L判・KG・スクエア・六切・A6からA4・リーガル・レターまで。インターフェイスはHi-Speed USBとIEEE802.11a/b/g/n(Wi-Fi対応)です。

外形寸法は約435×327×145mm、質量は約4.0kg。A4カラーコピーは約27秒、L判カラー写真は約52秒とされています。

向いている人: 月に数枚から十数枚、たまに書類を刷る人。まず一台目としてコンパクトな複合機を置きたい人。

向いていない人: まとまった枚数を毎月刷る人。一枚あたりの負担が効いてきます。自動両面印刷が必要な人。

自動両面印刷まで備えたコンパクト機


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エプソンのA4カラーインクジェット複合機です。最高解像度は5760×1440dpi、インクは4色(染料3色・顔料1色)の独立型。用紙サイズはカードや名刺からA4まで対応し、給紙方式は背面給紙です。コピーとスキャナーに対応し、FAX機能とレーベルプリントはありません。自動両面印刷に対応しているのが、書類用途での大きな利点です。

ネットワークは無線に対応し、インターフェイスはHi-Speed USBとIEEE802.11b/g/n。カラー液晶モニターは1.44型です。印刷速度は標準で、A4の写真用紙が約2分40秒、L判の写真用紙が約70秒とされています。

寸法は収納時が約W37.5×H17.0×D30.0cm、使用時が約W37.5×H24.2×D57.8cm、質量は約4.3kg(本体のみ)です。使用時の奥行きが収納時のおよそ二倍近くになるので、設置場所は使用時の寸法で確認してください。

エプソンは製品ページで、文字に強い顔料ブラックインクを採用していること、スマホにある写真やPDFをすぐ印刷でき接続も簡単であることを案内しています。

向いている人: 在宅の書類が定期的にあり、両面で刷る資料が多い人。スマホから刷る機会が多い人。

向いていない人: 写真の画質を最優先する人。色数が多い写真向けモデルのほうが得意です。背面給紙のため、棚の中に押し込んで使いたい人にも向きません。

枚数が多いならエコタンク方式

エプソンの大容量インクを補充して使うエコタンク方式のA4カラー複合機です。インクは顔料と染料の2種類のブラックにカラーを加えた5色構成で、写真も文書もこなせます。

インクは使い切りサイズでA4カラー文書を約1000ページ、増量サイズで約3700ページ印刷できるとされ、補充の頻度が低く済みます。L判印刷は1枚約25秒とされています。

向いている人: 毎月まとまった枚数を刷る人、今後印刷が増えそうな人。補充の手間を減らしたい人。

向いていない人: 月に数枚しか刷らない人。本体の分を刷って取り返す前に使わなくなる可能性があります。設置スペースが限られる人。

買う前に多い失敗パターン

最後に、選び方の話とは別に、購入後につまずきやすい点を挙げます。

  1. 収納時の寸法だけで棚に入ると判断した
    → 使用時の寸法(給紙・排紙トレイを開いた状態)で確認する。仕様に記載がなければ奥行きに大きめの余裕を見る
  2. 上ぶたが開く高さを確認していなかった
    → 複合機はスキャナー部のふたを開けられないとコピーとスキャンが使えない。棚の中に置くときは特に注意
  3. 年に数回しか使わないのにインクジェットを買った
    → クリーニングでインクが減り、いざ使うときに空になっている。買わない選択肢を先に検討する
  4. 本体の安さだけで選んだ
    → 印刷枚数が多い人は、一枚あたりの負担で逆転する。月の印刷枚数から方式を逆算する
  5. 無線対応なら置き場所は自由だと思った
    → 電源は欠かせない。さらに背面給紙の機種は後ろと上に空間が要る
  6. スマホから刷れずに詰まった
    → スマホとプリンターが同じ無線LANにつながっているかを確認する。ルーターが周波数帯ごとに別の名前を出している場合は特に起きやすい
  7. カタログの印刷コスト値を自分の支払額の予測として使った
    → カタログ値は共通の測定条件で出した比較用の物差し。実際の減り方は刷る内容で変わる

筆者の判断基準

この記事を書くにあたっての、筆者としての決め方を書いておきます。

まず決める順番は、刷るか刷らないか、月に何枚か、置けるか、方式はどれかです。多くの記事は方式の比較から入りますが、順番を逆にすると、そもそも不要だったケースや、置けないサイズを選んでしまうケースを後から発見することになります。

買わない判断を先に潰しておくのが二つ目の基準です。在宅ワークの机まわりは、増やした機材の分だけ確実に狭くなります。月の印刷が数枚で、外出のついでにコンビニへ寄れるなら、そちらのほうが総合的に楽です。逆に、押印して当日返送する書類が定期的にあるなら、自宅にある価値は大きくなります。

三つ目は、金額ではなく構造で比べることです。価格は変動しますが、刷った量に比例するもの、使わなくても減るもの、本体を何年使うか、という枠組みは変わりません。カタログの数字は、測定条件が公開されているものだけを比較の物差しとして使い、自分の支払額の予測には使わない、という線引きをしています。

四つ目は、機能は場面で判断することです。ADF も FAX も、使う場面を具体的に言えないなら不要です。逆に自動両面印刷は、在宅の書類仕事があるなら場面をすぐ言えるはずなので、優先度は高めに置いています。

なお、この記事は公表されている仕様と公式の測定条件、公的機関の資料をもとに構成しています。特定の機種を長期間使い込んだ体験にもとづく評価ではありません。実機の使用感については、購入前に販売ページのレビューやメーカーの仕様ページもあわせてご確認ください。

よくある質問

プリンターの寿命はどれくらいですか

メーカーは機種ごとに想定の使用期間や総印刷枚数を設けており、一律の年数は決まっていません。実務的には、インクの供給が終わったとき、部品の交換が必要になったとき、対応するOSから外れたときが買い替えの目安になります。使いたい機種の想定使用量は、メーカーの仕様ページで確認できます。

使わない期間が長いとどうなりますか

インクジェットはノズルが乾いて詰まりやすくなります。多くの機種は電源投入時などにクリーニング動作を行い、そのときにインクを消費します。電源プラグを抜きっぱなしにせず本体の電源ボタンで切ること、月に一度でよいので一枚刷ることが、一般的に案内されている対策です。年に数回しか使わない見込みなら、購入自体を見直す判断もあります。

古いプリンターはどう処分すればよいですか

家庭用プリンターは自治体によって扱いが異なり、粗大ごみ、小型家電リサイクルの回収ボックス、メーカーや販売店の回収サービスなど複数の経路があります。お住まいの自治体の案内を確認するのが確実です。インクカートリッジは、メーカーや家電量販店が回収窓口を設けている場合があります。

レーザープリンターは家庭で使えますか

使えます。白黒の文書をまとまった枚数、速く刷りたいなら有力な選択肢です。ただし本体が大きく重くなりやすいこと、印刷時に熱を使うため消費電力が大きくなりやすいこと、カラーが必要になると本体がさらに大きくなることは、家庭の設置環境では制約になります。在宅の書類印刷でカラーを使う可能性があるなら、インクジェットの複合機のほうが取り回しは楽です。

参照した公式情報(取得日)

まとめ

  • 在宅の書類印刷は、年賀状・写真中心の選び方とは軸が違う。まず使い方を書類中心と決める
  • 見る軸は4つ。インク方式、サイズと設置、機能、維持コスト
  • サイズは使用時の寸法で確認する。給紙・排紙トレイが開くと奥行きは大きく増える
  • 機能は使う場面から逆算する。自動両面印刷は在宅の書類仕事で効きやすく、ADF と FAX は場面を言えるときだけ
  • 維持コストは金額ではなく構造で見る。使わない期間があるほどクリーニングで不利になる
  • 迷ったら月の印刷枚数から逆算する。少ないならカートリッジ式、多いなら大容量タンク式かレーザー
  • 買わない選択肢(コンビニ印刷、PDF運用、スキャンのみ)も先に検討する

※価格やスペックは記事作成時点で参照した商品情報にもとづきます。最新の内容は各商品ページでご確認ください。

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