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在宅ワークを続けていると、「なんとなく手元が暗い」「画面が見づらい」「Web会議で自分の顔だけ暗く映る」といった、光にまつわる小さな不満が出てきますよね。とりあえず部屋の照明を明るいものに替えてみても、いまひとつ解決した気がしない――そんな経験はないでしょうか。
その理由は、光の悩みが実は3つの目的に分かれているからです。手元(作業面)を照らす光、画面(モニター)を見やすくする光、そしてWeb会議で自分の顔を映す光。この3つは、必要な明るさも、光を足す場所も違います。部屋全体を明るくするだけでは、どれか一つしか解決しないこともあるのです。
この記事では、まず「机の上はどれくらいの明るさが目安か」をはっきりさせたうえで、費用ゼロでできる見直しから順に、3つの光の整え方をまとめます。環境全体を見直したいときは在宅ワーク環境を快適にする方法もどうぞ。
照明は「明るさ」より「どこの光か」で分ける
照明を考えるとき、つい「暗いから、もっと明るく」と部屋全体の明るさで捉えてしまいがちです。ですが在宅ワークで効いてくるのは、部屋全体よりも手元・画面・顔という“場所ごとの光”です。
たとえば、天井の照明を明るくしても、体の影が手元に落ちて書類が見えにくいことがあります。一方で画面は、明るくするより映り込みを抑えたほうが見やすくなる場合が多いです。会議の顔映りにいたっては、明るさの総量よりも「光がどちらから当たっているか」で決まります。目的が違えば、打つ手も変わるのです。
とはいえ、分ける前にひとつだけ共通の物差しを持っておくと判断が速くなります。それが、机の上の明るさです。
まず「いまの明るさ」を知るところから
明るさは「ルクス(lx)」という単位で表されます。感覚で「暗い気がする」と言っているうちは対策も感覚的になってしまうので、目安の数字を知っておくと迷いが減ります。
机の上は300ルクス以上が下限の目安
厚生労働省の情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説は、パソコンを使う作業の作業環境管理について、ディスプレイを用いる場合の書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上を目安とし、作業しやすい照度とすること、としています。
また、職場の環境を定めた法令(事務所衛生基準規則 第10条)でも、作業面の照度は一般的な事務作業で300ルクス以上、付随的な事務作業で150ルクス以上と定められています(2022年12月施行の改正で、それまでの3区分から2区分に整理され、基準が引き上げられました)。
ここで大事なのは、300ルクスは「これ以上は暗くしない」という下限側の数字だという点です。ガイドラインが目安の数字に続けて作業しやすい照度とすることと書き添えているとおり、「300あれば快適」という意味ではありません。
「快適に作業する」なら、その上を目標にする
では快適な側の目安はどこかというと、厚生労働省の職場における労働衛生基準が変わりました(事務所衛生基準規則の改正案内)が、個々の事務作業に応じた適切な照度については作業ごとにJIS Z 9110などの基準を参照するように、と案内しています。つまり法令の数字は下限で、作業に合った明るさは照明側の基準で決めるという二段構えです。
そのJISの照度基準では、事務室の推奨はおよそ750ルクスと案内されることが多く、法令の下限とは倍以上の開きがあります(規格本体は有償のため、ここでは広く案内されている値として挙げています)。300ルクスは「守るべき下限」、750ルクス前後は「気持ちよく作業するための目標」と、性格を分けて捉えると整理できます。
なお、目標に近づける方法は「部屋全体を明るくする」だけではありません。同ガイドラインの解説も、高齢の作業者への配慮として「照明機器等も、天井に配置した全体照明とは別に必要となる場合は、局所に作業用照明機器を配置することにより個人の特性に配慮した照度条件を実現することが可能となる」としています。部屋全体を上げるより、足りない場所に足すほうが合理的なわけです。
スマホのアプリで、いまの明るさを測ってみる
専用の照度計を買わなくても、スマートフォンの光センサーを使う照度計アプリで、おおよその明るさは確認できます。無料のものがいくつも公開されています。
測り方はかんたんで、画面を上にしたスマホを、実際に作業している場所(キーボードの横や書類の上)に置いて読むだけです。空中で天井に向けて測ると値が変わってしまうので、机に置くのがポイントです。
ただし、スマホのセンサーは精度に限界があるとされています。「300を大きく下回っていないか」を見る簡易チェックと割り切って使うのがちょうどいい距離感です。
費用ゼロで先にやる3つの見直し
目安が分かったら、いきなり照明器具を買い足す前に、いまある光の配置を見直すところから始めると無駄がありません。ここは費用がかからないうえ、効き方が大きい部分です。
① 机を窓に真正面から向けない
窓に対して机をまっすぐ向けると、日中は窓の明るさに目が引っ張られて画面が暗く見えます。逆に窓を背にすると、今度は画面に窓が映り込み、Web会議では顔が逆光になります。
対策は、天板の向きを少し振って、窓の光が横から入るようにすることです。90度回すのが難しければ、斜めにずらすだけでも映り込みは減ります。
② カーテン・ブラインドで、光を天井へ回す
窓の光そのものは、消すより「散らす」ほうが扱いやすくなります。前述の厚生労働省ガイドラインも「ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること」としており、窓まわりの調整は器具を買う前の基本の手当てという位置づけです。
ブラインドなら、羽根を少し上向きにして、光をいったん天井に当ててから部屋へ回すと、まぶしさが和らぎ、影も薄くなります。レースカーテンを1枚挟むだけでも、直射日光の強い時間帯は楽になります。
③ まぶしさを2種類に分ける(直接/映り込み)
「まぶしい」と感じたとき、原因は2つに分かれます。これは感覚的な分類ではなく、厚生労働省ガイドラインの解説がグレアを「視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいう」と定義しているとおり、直接と間接(映り込み)という2つの入り方があるためです。
- 光源が直接目に入っている:裸の電球やライトの発光面が視界に入っているパターン。角度を変える、シェード(カサ)付きのものを使う、位置を数センチずらす、で解決することが多いです。ガイドラインが「間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること」を挙げているのも、発光面を直接見せない方向の対策です
- 画面や机に光が映り込んでいる:光源そのものは見えていないのに、反射して視界に入っているパターン。こちらは照明を暗くしても消えず、位置関係を変えないと解決しません
同じ「まぶしい」でも打つ手が逆になるので、どちらかを先に見分けると遠回りしなくなります。
光①:手元(作業面)の光
まず、手元=机の上の作業面を照らす光です。書類に目を通す、キーボードや手元を見る、といった作業で効いてきます。
手元が暗くなる原因は、たいてい自分の影
部屋の照明だけに頼ると、自分の体や頭が光をさえぎって、手元に影ができやすくなります。とくに夜や、窓から遠い席では顕著です。天井の照明を明るくしても影は消えないので、机の上を直接照らす光を足すのが近道です。
デスクライトの選び方や置き方は在宅ワークで手元が暗く目が疲れるとき|デスクライトの選び方にまとめています。
器具のタイプは「机で何をするか」で決まる
手元の光を足す器具にはいくつかタイプがあり、机の使い方で向き不向きが分かれます。
- 紙の資料をよく読むなら:机の広い範囲を上から照らせる、置き型やクランプ式のデスクライト
- 外部モニター中心で紙が少ないなら:画面の上に載せるタイプのように、机に台座を置かずに手元を照らせる形
- 顔の明るさが目的なら:発光面の広い、正面寄りに置けるライト(会議用なので後述します)
大事なのは、ライト本体の明るさの数字より、机の上にどれだけ光が届くかです。同じ明るさでも、高い位置から広く照らすか、低い位置から狭く照らすかで体感は変わります。
数字より「周りとの明暗の差」を小さくする
明るさを足すときのコツは、数字を追いかけるより、周りとの「明暗の差」を小さくすることです。厚生労働省ガイドラインも、300ルクスの目安に続けて「ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること」としています。解説では、瞳孔が明るさに応じて大きさを調節しているため、画面や手元と周辺の明るさの差が大きいと目の負担が大きくなる、と理由づけられています。
具体的な目安として、解説にはグレアを防ぐために近い視野内での輝度比は1:3程度、広い視野内の輝度比は1:10程度が一般に推奨されている、という記述もあります。真っ暗な部屋で手元だけがまぶしいのは、この比率から大きく外れた状態です。部屋全体をほどよく明るくしたうえで、手元に光を足すイメージだと落ち着きます。
光②:画面(モニター)の見え方の光
次に、画面を見やすくする光です。ここは少し意外かもしれませんが、画面まわりは「明るくする」より「余計な光を減らす」ほうが効くことが多い場所です。
画面は「明るくする」より「映り込みを減らす」
画面が見づらい原因でよくあるのが、窓や照明が画面に映り込んでしまうケースです。背後や真横に窓・照明があると、白い反射が乗って文字が読みにくくなります。厚生労働省ガイドラインの解説も、視野内の高輝度の照明器具・窓・壁面が「ディスプレイ画面上に映り込む場合も同様である。したがって、ディスプレイを置く位置を工夫して、グレアが生じないようにする必要がある」としており、さらに「映り込みがある場合には、ディスプレイ画面の傾きを調整することなどにより、映り込みを少なくすることが必要である」と続けています。
つまりこの場合は明るさを足すのではなく、画面の位置と傾き、机の向きを変えて映り込みを減らすのが先決です。まず画面を数センチ傾けるだけでも変わります。
机の配置をどうしても変えられないときは、画面に覆いをかぶせて光を遮る道具もあります。既製品と自作の比べ方はモニターフードの選び方にまとめました。なお同じ解説は、映り込み対策としてフィルターを取り付ける方法にも触れつつ「フィルターの性能によっては、表示文字の鮮明度が低下したり、フィルター自身の表面が反射したりすることがある」と注意を促しています。画面に何かを足すときは、反射率の低いものを選ぶのが前提です。
目が疲れにくい画面と光の関係は在宅勤務で目が疲れない環境づくりで解説しています。
画面の明るさは、時間帯で変えていい
見落とされがちなのが、画面の明るさは固定しなくていいということです。日中の明るい部屋では明るめにしないと文字が沈みますし、夜に同じままだと、暗い部屋で画面だけが光っている状態になります。
目安は、画面と、その周りの壁や机の明るさの差が大きくなりすぎないこと。日中は上げ、夕方以降は下げる。すぐ変えられるようにしておくと、こまめに合わせられます。
文字が見づらいときは、光以外の原因も疑う
なお、「画面の文字がぼやけて見づらい」場合は、光だけが原因とは限りません。表示設定や解像度、視距離、視力の変化などが重なっていることもあります。切り分け方はWindowsでモニターの文字がぼやけるときの直し方を参考にしてください。目の不調が続くときは、環境の調整だけで抱え込まず、眼科で相談すると安心です。
光③:Web会議(自分の顔)の光
3つめが、Web会議で自分の顔を映す光です。ここは明るさの総量ではなく、光の「向き」がほとんどを決めます。
顔の映りは、明るさより「光の向き」で決まる
顔が暗く映る、逆光でシルエットになる、という悩みの多くは、背後に窓や照明があり、正面からの光が足りていないことが原因です。対策は、カメラのある正面側から、やわらかい光を足すこと。
このとき、真正面から強く当てると顔が平板に見えるため、正面から少し横にずらした位置から当てると、自然な陰影が残ります。正面からの光の足し方はWeb会議で顔を明るく見せる方法にまとめています。
光には3つの役割がある(当てる・和らげる・背景)
映像の現場では、光を役割で分けて考えます。顔を照らすメインの光、反対側から弱く当てて影を和らげる光、背景や輪郭を起こす光の3つです。すべて揃える必要はありませんが、「いま足りないのはどの役割か」という見方を持っておくと、ライトを増やすべきか位置を変えれば済むかを判断しやすくなります。たとえば「顔は明るいのに、のっぺり見える」なら、足りないのは影を作る側であって明るさではありません。
会議の日だけの光の整え方
在宅ワークでは、会議のある日とない日で必要な光が変わります。毎日ライトを点けっぱなしにする必要はなく、会議の前に机の向きを少し変える、ライトを1つ手前に出すだけでも映りは変わります。
顔の明るさだけでなく、映り全体(背景・画角・カメラの高さなど)をまとめて底上げしたいときはWeb会議で映りが悪いとき|カメラの画質と背景を整える方法を、音や回線まで含めて会議環境そのものを見直すならWeb会議の環境の整え方もあわせてどうぞ。
色の温度で、1日の光にメリハリをつける
明るさと並んでもうひとつ、光には「色み」があります。色温度と呼ばれ、ケルビン(K)という単位で表されます。
昼は自然光に近い白、夕方以降は暖かい色へ
おおまかに、5,000K前後の白っぽい光を「昼白色」、6,500K前後の青みがかった光を「昼光色」、3,000K前後のオレンジがかった光を「電球色」と呼びます。
作業用の照明としては、自然光に近い昼白色あたりが無難とよく案内されます。夕方以降は電球色寄りに落とすと、仕事を終える合図にしやすいという使い方もあります。ただし感じ方には個人差があり、「この色なら集中できる」と言い切れるものではありません。合わなければ変える、くらいの気持ちで試すのがよいと思います。
夜まで作業が続いた日は、光を落として目を休める時間を作るのも手です。休憩の取り方は疲れた目を休憩時間に温めたい。在宅ワークのホットアイマスクの選び方でも触れています。
切り替えるなら、調色できる器具が手間がない
時間帯で色を変えたいなら、器具を2つ用意するより色を切り替えられる(調色機能のある)ライトや電球を1つ選ぶほうが手間がかかりません。逆に、色を変える運用をしないなら調色機能は無くても困りません。使わない機能にお金を払わないというのも立派な選び方です。
よくある疑問
部屋の照明を明るいものに替えれば済みますか?
済むこともありますが、手元の影と画面の映り込みは、部屋を明るくしても消えません。むしろ映り込みが増える場合もあります。まず机の向きと影を確認し、それでも足りないときに部屋全体を検討する順番がおすすめです。
電球色は仕事に向かないのでしょうか?
向かない、と決めつける必要はありません。細かい字を読む作業では白い光のほうが見やすいと感じる人が多いようですが、書類をあまり見ない仕事なら電球色で落ち着いて作業できる人もいます。手元だけ白い光を足して部屋は電球色のまま、という組み合わせも可能です。
ライトは何個くらい必要ですか?
足りない目的の数だけ、が答えになります。手元だけが不足しているなら1つで足ります。会議が多く顔の光も欲しいなら、正面側にもう1つ。1つ足して、また測って確かめるという進め方で十分です。
参照した公式情報(取得日: 2026-09-05)
- 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説|厚生労働省(2026-09-05 取得。書類上・キーボード上300ルクス以上の目安、明るさの差をなるべく小さくすること、グレアの定義と輝度比、窓のブラインド・カーテン、映り込みと画面の傾き、局所照明の記載)
- 情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(パンフレット)|厚生労働省(2026-09-05 取得。令和元年7月12日付け基発0712第3号に基づく解説版。「机上の照度は300ルクス以上が目安」「明暗の対照が著しくない室内照明」の記載)
- 職場における労働衛生基準が変わりました|厚生労働省(2026-09-05 取得。事務所衛生基準規則第10条の照度改正=一般的な事務作業300ルクス以上・付随的な事務作業150ルクス以上、JIS Z 9110 参照の案内)
まとめ:在宅ワークの照明は、手元・画面・会議で分けて整える
在宅ワークの照明は、部屋全体の明るさで捉えるより、目的で分けると整えやすくなります。
- まず測る:机の上が300ルクスを下回っていないかを確認する(快適さの目安はもっと上)
- 費用ゼロを先に:机を窓に正対させない/ブラインドで光を天井へ回す/まぶしさが「直接」か「映り込み」かを見分ける
- ①手元:作業面の影を減らす → デスクライトの選び方
- ②画面:明るくするより映り込みを減らす → 目が疲れない環境づくり/文字がぼやける直し方/モニターフードの選び方
- ③会議:正面から少し横にずらして光を足す → 顔を明るく見せる方法/映りの改善
- 色みは最後に:昼は白、夕方以降は暖色。合わなければ変えればいい
まずは机の向きと窓・照明の位置を見直し、足りない目的にだけ光を足す。この順番なら、照明選びで迷いにくくなります。環境全体の見直しは在宅ワーク環境を快適にする方法もどうぞ。


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