在宅ワークでリビングしかない|仕事場所の作り方と毎日返せる撤収の型

在宅ワークでリビングしかない|囲うより、畳まずに載せる デスク環境

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家に個室がなく、仕事ができる場所がリビングしかない。この状態で在宅ワークを続けるとき、最初に決めるべきなのは「どうやって集中するか」ではありません。リビングのどこに、どう仕事場所を作り、それを毎日どう戻すかです。

リビングしかない人向けの記事を読むと、たいてい同じことが書いてあります。3面のパーティションでデスクを囲いましょう、と。座れば壁に囲まれた状態になるので集中できます、と。

その絵を想像してみてください。リビングの一角に、囲いが立っています。家族は、それを毎日見て暮らします。

自分は集中できるでしょう。でもリビングは、自分の部屋ではありません。ここが、個室がある人との決定的な違いです。

リビングしかない人の本当の問題は、集中できないことではありません。自分の場所ではないことです。だから、自分の都合だけでは解けません。

この記事では、囲って自分の城を作る方向ではなく、借りているものを返しやすくする方向で、机の置き場所・明るさ・Web会議・音・家族との合図までを順に決めていきます。

  1. リビングしかない人が先に決める3つのこと
  2. リビングは、借りている場所
    1. リビング固有の4つの制約
  3. 机はどこに置くか|リビングで成立する4つの配置
    1. 配置A|壁向き(いちばん視界が切れる)
    2. 配置B|窓向き(明るいが、画面が見えにくくなる)
    3. 配置C|背中側に家具を置く
    4. 配置D|ダイニングテーブル兼用(撤収の型とセットで成立する)
    5. 先に家族の動線を描く
  4. 広さ・高さ・明るさ|公的な基準から逆算する
    1. 机は機器と書類が置けて、脚が動く広さ
    2. 高さは数値より、肘と足で合わせる
    3. 手元300ルクスという目安
    4. リビングの照明は食卓向き。足すのは天井ではなく手元
  5. 制約1|夕方には返す。だから畳むのではなく載せる
    1. 毎回の出し入れは、そのまま立ち上げ時間になる
    2. 中身を触らずに、まとめて動かす
    3. 鍵が付いている意味
    4. 配線も載せる側に寄せる
    5. ワゴンが置けない場合
  6. 撤収を型にする|戻すのは位置だけ
    1. 撤収の型
    2. うまくいかないときに疑う3点
  7. 制約2|視界は共有物。囲うなら自分の視線だけ
    1. 3面パーティションは、リビングでは重い
    2. 卓上で足りることが多い
    3. 囲いのサイズを決める順番
  8. Web会議|背景と音は、座る向きでほぼ決まる
    1. 背景に何が映るかは、席を決めた時点で決まっている
    2. バーチャル背景に寄りかからない
    3. 家族がいる部屋での情報の扱い
  9. 制約3|人がいる。ルールは時間より合図
    1. 18時までは仕事、はたいてい破られる
    2. 見えるものを合図にする
    3. 合図が効かない相手には、時間帯を共有する
  10. 音|自分が出す音と、家族が出す音を分ける
    1. 自分が出す音
    2. 家族が出す音
  11. 筆者の判断基準|買う前に、どこまで配置と手順で粘るか
  12. よくある質問
    1. ダイニングテーブルで仕事をしても問題ありませんか
    2. パーティションを家族に嫌がられました。どうすればいいですか
    3. 結局、個室やコワーキングを借りたほうが早いのでは
  13. 参照した公式情報(取得日)
  14. まとめ|自分の場所にしようとしない
  15. 関連記事

リビングしかない人が先に決める3つのこと

細かい道具の話に入る前に、決める順番を出しておきます。この順番を逆にすると、買ったものが置けない、置いたけれど毎日どかすことになる、という結果になりやすいためです。

決める順 決めること 判断の軸
1 座る位置と向き 家族の動線の上に座らない/背後に何が映るか
2 道具のまとめ方 中身を触らずに位置だけ動かせるか
3 家族への合図 時計も記憶も要らずに、見て分かるか

順番に理由があります。座る位置が決まらないと、必要な明るさも、Web会議の背景も、収納の置き場所も決まりません。逆に位置さえ決まれば、あとは足りないものを足すだけになります。

そして、この3つはいずれも買い物ではありません。リビングで働く環境づくりは、道具を買う前に決められることのほうが多い、というのがこの記事の立場です。

リビングは、借りている場所

自分の部屋があれば、机を置いて、そのままにしておけます。占有できるからです。

リビングはできません。夕方には食卓に戻り、家族がテレビを見て、子どもが宿題を広げます。あなたの作業スペースは、時間で借りているだけです。

この前提を認めると、打ち手が変わります。

リビング固有の4つの制約

制約 内容 この記事での扱い
時間で借りている 夕方には返す必要がある 撤収を型にする
視界を共有している 囲いは、家族の景色を壊す 切るのは自分の目線だけ
人がいる 声で中断される・画面が見られる 合図と情報の扱い
音が筒抜け 自分の音も、家族の音も届く 音を2方向に分けて考える

上位に出てくる記事が書いているのは、2つめへの対処(囲う)が中心です。しかもその囲いが、家族側から見てどうなのかには触れていません。

一方で、リビングに仕事場所を作る記事の多くが扱っている机の配置・明るさ・配線は、リビングしかない人にとっても現実に効きます。順番に見ていきます。

机はどこに置くか|リビングで成立する4つの配置

新築やリフォームの記事では、階段下やロフト、造作カウンターといった選択肢が出てきます。しかしリビングしかない状況では、今ある家具と今ある壁で決めるしかありません。現実的な配置は、次の4つに絞られます。

配置A|壁向き(いちばん視界が切れる)

壁に向かって座る配置です。視界に入るのが壁だけになるので、囲いを立てなくても視線が切れます。パーティションを買う前に、まずこれで足りないかを確かめる価値があります。

弱点は2つ。ひとつは、圧迫感が出やすいこと。もうひとつは、背後が部屋の中央になるため、Web会議で背中側の生活空間が映り込むことです。後者はこのあと扱います。

配置B|窓向き(明るいが、画面が見えにくくなる)

窓に向かって座る配置です。自然光が入るので昼間の手元は明るくなります。

ただし、画面の向こう側が明るいと、画面自体は見えにくくなります。厚生労働省の情報機器作業のガイドラインでも、明暗の対照が著しくない室内照明にすること、太陽光が差し込むときは窓にブラインドを、という趣旨の記載があります。窓向きにするなら、ブラインドやレースカーテンで光量を調整できることが前提です。

配置C|背中側に家具を置く

壁が空いていない場合の折衷案です。ソファ・本棚・キャビネットなどを背にして座ると、後ろからの視線と生活音の一部が遮られます。囲いを買わずに、今ある家具で半分だけ仕切る発想です。

家族から見ても、家具はもともとそこにあるものなので、景色が変わりません。囲いを立てたときの、家の中に異物がある感じが出にくいのが利点です。

配置D|ダイニングテーブル兼用(撤収の型とセットで成立する)

専用の机を置く余地がまったくない場合、ダイニングテーブルで仕事をすることになります。この配置は妥協として語られがちですが、リビングしかない人にとっては現実的な選択肢です。

条件はひとつだけ。毎日返せる仕組みとセットにすることです。テーブルの上に仕事道具を置きっぱなしにできない以上、後述する撤収の型が無いと成立しません。逆に言えば、撤収さえ型になっていれば、専用机が無くても回ります。

先に家族の動線を描く

4つのうちどれを選ぶかは、集中しやすさではなく、家族の動線で決めることをおすすめします。

紙でもスマートフォンのメモでもかまいません。リビングを上から見た図を描いて、次の線を引いてみてください。

  • 玄関からリビングに入る線
  • キッチンとダイニングを往復する線
  • ソファとテレビの間の線
  • トイレ・洗面所へ抜ける線

この線の上に座ると、高い確率で中断されます。ルールでも合図でも解決しません。物理的に人が通るからです。逆に、線が交差しない角が1か所でもあれば、そこが第一候補になります。

配置を集中できるかどうかで選ぶと、たいてい部屋の真ん中の使いやすい場所を取りにいってしまい、家族とぶつかります。線を避けるという基準にすると、選択肢が自然に絞れます。

広さ・高さ・明るさ|公的な基準から逆算する

配置が決まったら、その場所が作業に足りているかを確認します。感覚で判断せず、公的なガイドラインの記述を目安にすると迷いません。

なお、自宅は事業所ではないため、事務所衛生基準規則や情報機器作業のガイドラインが法的にそのまま適用されるわけではありません。厚生労働省も、自宅等でテレワークを行う際にはこれらの衛生基準と同等の作業環境となるよう事業者が教育・助言等を行う、という位置づけで示しています。つまり、そのまま守る義務はないものの、目安として参照する価値の高い数字だということです。

机は機器と書類が置けて、脚が動く広さ

情報機器作業のガイドラインは、机や作業台について、機器と書類を置ける広さがあること、机の下は脚が動かせる広さがあることを挙げています。

リビングで見落とされやすいのは後半です。ダイニングテーブルは脚の位置が四隅にあることが多く、座る場所によっては脚が当たります。また、テーブル下に椅子や収納を寄せていると、そもそも脚が伸ばせません。天板の広さより、下の空きを先に見てください

奥行きが足りているかどうかの目安は、デスクの奥行きは何センチ必要かにまとめています。

高さは数値より、肘と足で合わせる

ダイニングテーブルは食事のための高さで作られており、パソコン作業の高さとは限りません。ガイドラインも、机の高さは作業者に合ったものを、椅子は座面の高さや背もたれが調節できるもの、という書き方をしています。万人に共通する正解の数値は示されていません

合わせ方は、上から順ではなく下から順です。まず足の裏全体が床につく高さに椅子を合わせ、次に肘の角度を見ます。天板が高すぎて肩が上がるなら、椅子を上げて足台を入れるほうが、テーブルを買い替えるより早く済みます。

腰や肩の痛みが出ているなら、調整の順番は在宅ワークで全身が疲れるときで部位別に整理しています。

手元300ルクスという目安

明るさには、はっきりした数字があります。

情報機器作業のガイドラインでは、机上の照度は300ルクス以上が目安とされています。また、事務所衛生基準規則の改正により、一般的な事務作業の照度は300ルクス以上(改正前は150ルクス以上)、付随的な事務作業は150ルクス以上(改正前は70ルクス以上)と定められ、令和4年12月1日から施行されています。

つまり、事務所であれば300ルクスが下限という水準です。自宅のリビングがこれを満たしているかどうかは、まず疑ってかかったほうがいい部分です。

リビングの照明は食卓向き。足すのは天井ではなく手元

リビングやダイニングの照明は、食事と団らんのために設計されています。落ち着いた明るさ、暖色、天井からの光。どれも仕事の手元を照らす目的では作られていません。

さらに、天井照明だけだと自分の頭と体が影を作ります。壁向きに座ると特に顕著で、手元だけが暗くなります。

対処は天井の電球を明るくすることではなく、手元に光を足すことです。ガイドラインは、ディスプレイと書類を交互に見る作業では明るさが著しく異ならないようにすること、間接照明はグレア(まぶしさ)の防止に効果的であることにも触れています。画面と紙の明るさをそろえるという視点で選ぶと外しません。

デスクライトの選び方は在宅ワークで手元が暗く目が疲れるときに、明るさ以外の要因(距離・乾燥)も含めた整理は在宅勤務で目が疲れない環境づくりにあります。

なお、画面の位置についてもガイドラインは目安を示しています。ディスプレイは眼から40cm以上の距離を確保し、画面の上端が眼の高さまでになるようにする、というものです。ノートパソコンをそのままテーブルに置くと、この条件からは外れます。

制約1|夕方には返す。だから畳むのではなく載せる

ここからは、リビング固有の制約に戻ります。最初の制約が、いちばん効きます。毎日、片付けなければならないという点です。

毎回の出し入れは、そのまま立ち上げ時間になる

パソコンを出す。資料を広げる。ペンを探す。前回どこまでやったかを思い出す。ここまでで数分です。

そして夕方、逆のことをします。閉じる、まとめる、どこかにしまう。

これが毎日2回発生します。時間の損失もありますが、本当の問題はそこではありません。今日は面倒だからやめておく、を生むことです。在宅の仕事も副業も、誰にも怒られません。だから、面倒の量がそのまま継続率に効きます。

多くの記事は、使わないときは畳んで収納しましょう、と書きます。しかし、畳むという行為そのものが毎日のコストです。

中身を触らずに、まとめて動かす

発想を変えます。畳むのではなく、載せる

キャスター付きの3段ワゴンです。スチール製で、ストッパー付きのキャスターが付いています。

使い方はこうです。仕事の道具——ノートパソコン、書類、ペン、充電器——をこのワゴンに載せたままにします。そして、

  • 始めるとき:ワゴンをテーブルの横に寄せる
  • 終わるとき:ワゴンを部屋の隅へ転がす

中身は触りません。開いた資料も、挿したままのケーブルも、そのままです。片付けたのはワゴンの位置だけで、作業の状態は保存されています。

これで立ち上げ時間をほぼゼロにすることと、リビングを明け渡すことが同時に成立します。畳む発想ではこの両立はできません。

鍵が付いている意味

もうひとつ、共有スペースならではの理由があります。です。

この製品は鍵1本で全段まとめてロックできます。地味に見えますが、リビングで働く人には現実的な価値があります。

  • 子どもが引き出しを開けて、書類にお絵かきをする
  • 家族の郵便物と仕事の書類が混ざる
  • 来客のとき、机の上に業務資料が出ている

これらは、パーティションでは1つも解決しません。囲いは視線を切るだけで、手は止めないからです。リビングで仕事の物を守るのは、囲いではなく鍵です。

配線も載せる側に寄せる

撤収がうまくいかない原因の多くは、実は書類ではなくケーブルです。電源アダプタ、モニターケーブル、充電ケーブル。これらが床のコンセントとテーブルの間をまたいでいると、毎回抜き差しすることになります。

対処は、ケーブル類をワゴンや箱の側にまとめて固定することです。電源タップをワゴンの背面や最下段に留めてしまい、外に出るのは壁のコンセントに挿す1本だけ、という状態にします。そうすると撤収は、1本抜いて転がすだけで終わります。

リビングでは、床をまたぐケーブルは家族のつまずきの原因にもなります。配線をきれいにする考え方はデスクの配線をきれいにする方法にまとめています。

ワゴンが置けない場合

ワゴンを置く隙間すらない、という場合もあります。それでも原理は同じです。中身を触らずに動かせる単位を作ってください。

蓋つきの箱ひとつでも成立します。大事なのは、作業の状態を保存したまま、位置だけ変えることです。

撤収を型にする|戻すのは位置だけ

道具がそろっても、毎日の動きが決まっていないと続きません。ここが、リビングしかない人にとっていちばん独自性のある部分だと考えています。撤収を、その日の気分ではなく型にする、という話です。

撤収の型

開始も終了も、手数を3つに固定します。手数が増えるほど、やらない日が出ます。

場面 手順 ポイント
開始1 ワゴン(または箱)を席の横に寄せる 中身は触らない
開始2 電源タップの1本を壁のコンセントに挿す 挿す線は1本だけにしておく
開始3 合図を出す(ヘッドホン・卓上ブースなど) 家族が見て分かる状態にする
終了1 画面を閉じる/必要な段だけ施錠する 書類はまとめない。段ごと閉じる
終了2 電源の1本を抜く 床の線をゼロに戻す
終了3 ワゴンを定位置へ転がす 定位置は毎回同じ場所にする

ポイントは、終了の手順に片付けるという言葉を一切入れないことです。片付けは判断を伴う作業なので、疲れている夕方には重くなります。位置を戻すだけなら判断が要りません。

うまくいかないときに疑う3点

型を決めても崩れる場合、原因はだいたい次の3つのどれかです。

  1. 定位置が決まっていない。転がす先が日によって違うと、置ける場所を探す判断が発生します。壁際でも部屋の角でも、毎回同じ場所にしてください。
  2. 床の線が2本以上ある。抜く本数が増えるほど、抜かない日が出ます。タップを使って壁に挿す線を1本にまとめます。
  3. 道具が2か所に分かれている。パソコンはテーブル、書類は棚、文具は引き出し、と分かれていると、撤収が3回に増えます。使う頻度の高いものは1つの単位に集約します。

逆に言えば、この3点が満たせていれば、専用の机が無くても、リビングでの在宅ワークは日々回ります。

制約2|視界は共有物。囲うなら自分の視線だけ

次が視界です。ここで、冒頭の話に戻ります。

3面パーティションは、リビングでは重い

囲いを立てれば、確かに視界は切れます。ただしリビングでは、その囲いは家族の生活空間の中に立ちます

自分の集中と、家族の景色。この2つはトレードオフです。個室ならトレードオフになりませんが、リビングではそうなります。だから、効果があるから置きましょう、では済みません。

卓上で足りることが多い

実際のところ、視界を切りたいのは自分の目線の高さだけです。部屋を分断する必要はありません。

卓上に立てる折りたたみ式のブースです。使うときだけ立てて、終わったら畳めます。低いので、家族の側から見たときの圧迫感が小さくて済みます。パネルがやや斜めに傾いた設計で、手元が暗くなりにくいとされているのも、天井照明だけのリビングでは意味があります。

囲いの大きさは、集中の深さではなく、家族との関係で決めるものだと考えてください。

囲いのサイズを決める順番

囲いを検討するときは、大きいものから小さいものへ下ろすのではなく、小さいものから上げていくと失敗しません。

  1. 机の向きを変える(費用ゼロ)
  2. 背中側に今ある家具を置く(費用ゼロ)
  3. 卓上ブースを置く(使うときだけ立てる)
  4. 床置きのパーティションを置く(家族の合意が要る)

3までで足りる人が大半です。4に進むのは、家族が置いていいと言った場合だけにしてください。リビングは共有物なので、ここだけは自分で決められません。

Web会議|背景と音は、座る向きでほぼ決まる

リビングで働く人がとりわけ気を使うのが、Web会議です。そして背景も音も、席を決めた時点でほぼ決まっています。会議の直前にできることは多くありません。

背景に何が映るかは、席を決めた時点で決まっている

配置Aの壁向きで座ると、視界は切れますが、カメラは自分の背後(=部屋の中央)を映します。洗濯物、ソファ、テレビ、通りかかる家族。すべて背景に入ります。

逆に、壁を背にして座れば背景は壁だけになります。集中しやすさと背景の安全さは、しばしば逆を向くということです。

現実的な折衷案は、会議のときだけ椅子の向きを変えることです。ダイニングテーブルなら、座る辺を変えるだけで背景が変わります。平常時は壁向き、会議は壁を背にという2つの位置を決めておくと、毎回考えずに済みます。

バーチャル背景に寄りかからない

背景をぼかす機能や画像を差し込む機能は便利ですが、リビングでは限界があります。人が横切ると輪郭が崩れますし、パソコンの負荷が上がって音声が途切れることもあります。回線と負荷の話はWeb会議の環境の整え方で詳しく扱っています。

ここでの考え方は単純で、物理で解決できることは物理で解決しておき、バーチャル背景は保険にする、という順番です。壁を背にできるなら、手間が少なく安定した方法になります。

家族がいる部屋での情報の扱い

もうひとつ、リビング特有で、かつほとんど語られない論点があります。家族がいる部屋で業務情報を扱うことについてです。

総務省のテレワークセキュリティガイドライン(第5版)は、テレワーク勤務者が実施すべき物理的セキュリティ対策として、画面の自動ロック設定やプライバシーフィルターの貼付、周囲にいる組織外の人の挙動への注意を挙げたうえで、自宅等で家族がいる場合についても、不注意により意図せず情報漏えい等が起きる可能性があるため注意するとしています。具体例として、離席中に子どもが意図せず操作すること、家族が撮影した室内写真に情報が写り込むことが挙げられています。

オンライン会議についても、音漏れや画面を介した情報漏えいが起きないよう注意すること、画面共有機能を使う際にデスクトップ等が意図せず共有されないよう整理しておくことが示されています。

これは家族を疑えという話ではありません。共有スペースで働く以上、悪意がなくても起きるという前提で、次のような手当てをしておくという話です。

  • 離席時に画面が自動ロックされる設定にする
  • 業務資料は出しっぱなしにせず、段ごと施錠できる場所に戻す(=前述の鍵)
  • 会議中は、背後に映る範囲に私物や書類を置かない
  • 画面共有の前に、デスクトップと開いているアプリを整理しておく

画面そのものを見えにくくする手もあります。覗き見防止フィルターの選び方にサイズの測り方をまとめています。

制約3|人がいる。ルールは時間より合図

最後は人です。上位の記事にも、家族とルールを決めましょう、と書いてありますが、どう決めるかが書かれていません。

18時までは仕事、はたいてい破られる

時間でルールを決めると、守られません。家族があなたの終業時刻を覚えていて、時計を見ながら生活してくれる、という前提が非現実的だからです。

悪気なく話しかけられ、そのたびに今仕事中だと言うことになります。それが続くと、今度は関係のほうが悪くなります。

見えるものを合図にする

効くのは、その場で見て分かる状態を作ることです。

  • ヘッドホンをしている間は声をかけない
  • ワゴンが寄せてある間は仕事中
  • 卓上ブースが立っている間は仕事中
  • 特定の椅子に座っている間は仕事中

どれでもかまいません。共通しているのは、家族が判断するのに時計も記憶も要らないことです。目に入った瞬間に分かる。だから守れます。

そして、合図は1つに絞ってください。3つ作ると、家族は覚えません。

合図が効かない相手には、時間帯を共有する

合図で解けるのは、判断ができる相手だけです。小さな子どもには通じません。この場合は、合図ではなく時間帯の共有に切り替えます。

Web会議のように中断が許されない時間だけを、前日か当日の朝に伝えておく方法です。1日中静かにしてもらうのは無理でも、決まった30分なら協力を得られることがあります。すべての時間を守ってもらおうとすると失敗しますが、優先度の高い時間だけに絞ると現実的になります。

それでも中断される場合の考え方は子どもや家族に邪魔されずに在宅ワークする方法に整理しています。

音|自分が出す音と、家族が出す音を分ける

リビングは音が筒抜けです。ただし、対策は音の向きによって別物になります。ここを混ぜると、買った道具が効きません。

自分が出す音

キーボードの打鍵音、マウスのクリック音、通話の声。これらは家族側に迷惑をかける音です。

打鍵音は、家族が聞いている音と自分が聞いている音が違うことが多く、まず何の音が届いているのかを切り分ける必要があります。キーボードの打鍵音がうるさいときの対策で3種類に分けて扱っています。

通話の声は、音量を下げるよりマイクを口に近づけるほうが効きます。マイクが遠いと、無意識に声が大きくなるためです。前述のとおり、大きな声でのオンライン会議は情報漏えいの観点からも避けたい行為です。

家族が出す音

テレビ、話し声、生活音。これらは自分の集中を削る音です。

ここで注意したいのは、リビングの音を消そうとしないことです。テレビを消してもらう、静かにしてもらう、という方向は、家族の生活を制限することになります。共有スペースである以上、長続きしません。

現実的なのは、自分の耳の側で処理することです。ヘッドホンやイヤホンは、音を遮るだけでなく、前述の合図としても機能します。ひとつの道具で2つの制約に効くので、リビングでは費用対効果が高い部類に入ります。

筆者の判断基準|買う前に、どこまで配置と手順で粘るか

リビング向けの記事はどうしても道具の紹介が中心になりますが、道具を足す前にできることのほうが多い、というのがこの記事の立場です。判断は次の3段階で考えています。

第1段階:配置で解く(費用ゼロ)。座る向きを変える、家族の動線から外れた角に移る、背中側に今ある家具を置く、会議のときだけ座る辺を変える。ここはすべて費用がかからず、失敗しても元に戻せます。囲いを検討する前に、まずこの段階を試すべきだと考えています。判断の目安は、壁向きと壁を背にする配置の両方を1週間ずつ試したかどうかです。

第2段階:手順で解く(費用ほぼゼロ)。撤収の型を決める、定位置を固定する、床の線を1本にまとめる、合図を1つに絞る。ここまでで、継続できない原因の多くは消えます。第1段階と第2段階をやり切らずに道具を買うと、買った道具自体が撤収の手間を増やすという逆効果になりがちです。

第3段階:足りない機能だけを足す。ここで初めて道具を検討します。優先順位は次のように考えています。

  1. まとめて動かせる単位(ワゴン・蓋つきの箱)— 撤収の型が成立しないと他がすべて崩れるため最優先
  2. 手元の明るさ(デスクライト)— 300ルクスという明確な目安があり、天井照明では届かないことが多い
  3. 耳側の処理(ヘッドホン)— 音対策と合図を1つで兼ねる
  4. 視線を切るもの(卓上ブース)— 1から3で足りない場合のみ
  5. 床置きのパーティション — 家族の合意が取れた場合のみ

段階を上げる前に確認しているのは次の3点です。

  1. その不便は、位置を変えるだけで消えないか(配置で解ける問題を道具で解こうとしていないか)
  2. 買ったものは、撤収の型に乗るか(毎日どかす必要があるものは、リビングでは続かない)
  3. 家族の景色を変えるものか(変えるなら、置く前に相談する)

3点目だけは、性能や価格の話ではありません。それでもリビングでは、ここが最終的な可否を決めます。

よくある質問

ダイニングテーブルで仕事をしても問題ありませんか

専用の机が無い状況では現実的な選択です。ただし、確認しておきたい点が3つあります。ひとつは脚が動く空きがあるか(テーブルの脚や下に寄せた椅子が当たらないか)。ふたつめは高さが合うか(合わなければ椅子と足台で調整するほうが早い)。みっつめは撤収の型があるかです。食事のたびに全部どかす必要があるため、中身を触らずに動かせる単位を作っておかないと、続けるのが難しくなります。

パーティションを家族に嫌がられました。どうすればいいですか

その反応は自然だと考えています。リビングは共有物で、囲いは家族の景色を変えるためです。おすすめは、床置きの囲いをいったん諦めて、机の向き→背中側の家具→卓上ブースの順で試すことです。卓上ブースは使うときだけ立てて、終わったら畳めるので、家族が見ている時間そのものが短くなります。集中したいから、ではなく、見える時間を短くするから、という方向で提案すると話が通りやすくなります。

結局、個室やコワーキングを借りたほうが早いのでは

外に場所を借りれば、視界も音も家族との調整も一度に解決します。費用と移動時間を許容できるなら、有力な選択肢です。

ただし、リビングでの環境づくりが無駄になるわけではありません。撤収の型と合図は、外に出る日と自宅の日を併用する場合にもそのまま使えますし、会議だけ外で受けるといった使い分けもできます。判断の目安としては、第1段階と第2段階(配置と手順)をやり切ってもなお、中断とWeb会議が業務に支障を出しているかだと考えています。ここをやらずに外に出ると、外でも同じ理由でうまくいかないことがあります。

参照した公式情報(取得日)

まとめ|自分の場所にしようとしない

リビングしかない人の対策は、囲って自分の城を作ることではありません。借りたものを返しやすくすることです。

  • 時間で借りている → 畳むのではなく載せる。中身を触らずに位置だけ変え、撤収は開始3手・終了3手の型にする
  • 視界を共有している → 囲いは家族の景色を壊す。机の向き→背中側の家具→卓上ブースの順に、小さいほうから上げる
  • 人がいる → ルールは時間ではなく見える合図で決める。1つに絞る。合図が通じない相手には、優先度の高い時間帯だけを共有する
  • 音が筒抜け → 自分が出す音と家族が出す音を分ける。家族の音は消しにいかず、耳の側で処理する

そして、配置と手順で粘れるところまで粘ってから道具を足す。明るさだけは目安がはっきりしていて、手元300ルクスという水準は天井照明では届かないことが多いので、そこは早めに手を打つ価値があります。

個室がある人と同じ戦い方をしようとすると、うまくいきません。リビングには、リビングの解き方があります。

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