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在宅ワークを続けていると、「どこがと言われると分からないけれど、全身がなんとなく疲れる・だるい」と感じることがありますよね。オフィスに通っていた頃より動く量が減り、同じ姿勢で長く座るようになったことが背景にあることも多いようです。
ただ、「全身の疲れ」とひとくくりにしたままだと、対策がぼやけます。おすすめしたいのは、疲れを部位に切り分けて、原因ごとに見直すことです。腰・肩首・目・手首・足の5つに分けると、「自分はどこがつらいのか」「どこの環境を見直せばいいのか」がはっきりします。
この記事では、まず全部位に共通する土台(作業時間の区切り方と、作業環境の数値)を厚生労働省のガイドラインの数値で押さえ、そのうえで部位ごとに「何が起きているか」「買わずにできること」「環境で直すところ」の3点を整理します。最後に、原因を1週間で切り分ける手順と、どこから買い替えを考えるかの判断基準まで通します。
なお、しびれや強い痛みが続く場合、休んでも取れないだるさがある場合は、自己判断で済ませず医療機関に相談してください。ここでは、あくまで在宅の作業環境を見直す観点で整理します。作業環境全体は在宅ワーク環境を快適にする方法もあわせてどうぞ。
「全身が疲れる」の正体は、小さな負担の合計
在宅ワークの疲れは、どこか一か所が急に痛むというより、複数の部位に小さな負担が同時にたまり、合計として「全身」に感じられることが多いものです。腰は座り方、肩は腕の支え方、目は画面との距離、手首は入力機器、足は血流と、それぞれ原因が違います。違う原因が同時に進むので、ひとつの対策では効いた実感が出にくいのです。
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、情報機器作業における問題点として、精神的疲労・身体的疲労を感じている作業者が多数にのぼることが指摘されています。つまり、体の疲れと気持ちの疲れは同じ土俵で語られていて、どちらか片方だけを見ても全体像はつかめません。
体に出るサインと、気持ちに出るサイン
体に出るサインは分かりやすく、腰の重さ、肩や首のこり、目の乾きやかすみ、手首の違和感、夕方の足のだるさなどです。一方で、気持ちに出るサインは「集中が続かない」「仕事に取りかかるまでが長い」「終業後に何もする気が起きない」といった形で現れます。
厄介なのは、この2つが互いを増やすことです。体が疲れると集中が落ち、集中が落ちると作業時間が延び、作業時間が延びるとさらに体が疲れます。だからこそ、気合いではなく時間と環境の側から切るのが現実的です。
「全身」のままだと打ち手が選べない
「全身が疲れた」という言葉のままでは、椅子を買えばいいのか、休憩を増やせばいいのか、モニターを足せばいいのかが決まりません。逆に「夕方になると腰の右側が重い」「夜になると目の奥が痛い」まで具体化できれば、見直す場所は自然に1〜2か所に絞られます。
次の章のセルフチェックは、そのための入口です。
疲れの出方セルフチェック:見直す場所を決める
まずは1週間、終業時に「今日どこがつらかったか」を一言だけ残してみてください。記録の付け方は在宅勤務の作業時間を記録する方法の考え方がそのまま使えます。そのうえで、次の表で見直す場所の当たりをつけます。
| あてはまる感覚 | 疑わしい原因 | まず見直す場所 |
|---|---|---|
| 座って1〜2時間で腰が重くなる | 浅く座っている・座面の高さが合っていない | 椅子の座面高と背もたれの当たり |
| 夕方に肩の上が張る、腕がだるい | 腕の重さを空中で支えている | 肘掛け・机の高さ・キーボード位置 |
| 首の後ろが痛い、頭が前に出ていると言われる | 画面が目線より低い | ディスプレイの高さ |
| 目の奥が痛む、夕方に画面がにじむ | 明るさ・視距離・乾燥 | 手元と画面の明るさ、画面までの距離 |
| 手首の親指側や小指側に違和感 | 手首をひねった姿勢、手の大きな動き | マウス・キーボードの形 |
| 夕方に靴下の跡が残る、足が冷える | 下半身の血流が滞っている | 立つ回数、足元の温度 |
| どこが、と言えないが全体がだるい | 連続作業が長い・動く量が少ない | 作業時間の区切り方(次章) |
複数あてはまるのが普通です。その場合は一番はっきり出ている1つから手をつけてください。全部同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。切り分け方は後半の引き算テストで詳しく扱います。
共通の土台①:座りっぱなしを区切る
どの部位の疲れにも共通するのが、同じ姿勢を続けないことです。ここは感覚ではなく、公的なガイドラインに数値があります。
国のガイドラインが示す作業時間の区切り
厚生労働省の情報機器作業ガイドライン(令和元年7月12日付け基発0712第3号、令和3年12月1日一部改正)は、作業時間について次のように示しています。
- 一連続作業時間が1時間を超えないようにする
- 次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設ける
- 一連続作業時間内に1回〜2回程度の小休止を設ける
解説では、小休止とは一連続作業時間の途中で取る1分〜2分程度の作業休止で、時間を定めず作業者が自由に取れるようにするもの、とされています。また、一連続作業時間を1時間としている根拠として、おおむね1時間以上の連続作業で入力ミスの頻度が増え、フリッカー値(大脳の疲労と関連する指標)に変化が見られたという研究結果が挙げられています。
つまり「なんとなく疲れたら休む」ではなく、1時間を超えないうちに、まとまった休止を挟むのが基準です。
30分ごとに立つ、という別の基準
もうひとつ、厚生労働省の健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023では、座位行動(座位や臥位でエネルギー消費が1.5メッツ以下の覚醒中の行動)について、長時間の座位行動をできる限り頻繁に、例えば30分ごとに中断(ブレイク)することが重要と報告されている、と示されています。成人への推奨事項でも、座位行動の時間が長くなりすぎないように注意することが挙げられています。
この2つは矛盾しません。目や脳の疲労を切る単位が1時間、血流を切る単位が30分と考えると整理しやすくなります。実務的には、30分ごとに立つか姿勢を変える、1時間ごとに画面から離れる、の二層で回すのが現実的です。
立つきっかけは仕組みで作る
在宅は通勤も社内の移動もないので、意識しないと本当に動かなくなります。意志で立とうとすると続かないため、きっかけを外側に置きます。
- タイマーで区切る(ポモドーロ・テクニックで集中を保つ方法の区切り方がそのまま使えます)
- 飲み物をデスクに置かず、取りに行く動線にする(在宅勤務で水分補給を忘れるときの置き場所)
- 音声だけの打ち合わせは立って受ける
- 印刷物や充電器を離れた場所に置く
同ガイドラインは、作業姿勢について「座位のほか、時折立位を交えて作業することが望ましい」とも述べています。座りっぱなしを崩す道具と習慣は在宅勤務の運動不足を解消する方法にまとめました。
なお身体活動・運動ガイド2023の成人への推奨は、3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上(歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上、1日約8,000歩以上に相当)、3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上(息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上)、筋力トレーニングを週2〜3日、という水準です。在宅で通勤分の歩数が消えると、この水準からかなり離れやすい点は知っておいて損がありません。
共通の土台②:作業環境の数値を一度だけ測る
作業時間の次は環境です。ここも感覚で調整すると迷子になるので、ガイドラインの数値を一度だけ当ててみるのが早道です。以下はいずれも厚生労働省の情報機器作業ガイドラインと、テレワークガイドラインのパンフレットが示している目安です。
| 項目 | 目安 | 出所 |
|---|---|---|
| 書類上・キーボード上の照度 | 300ルクス以上を目安 | 情報機器作業ガイドライン |
| 机上の照度 | 300ルクス以上 | テレワークガイドライン |
| ディスプレイまでの視距離 | おおむね40cm以上 | 情報機器作業ガイドライン |
| 画面の上端の高さ | 眼の高さとほぼ同じか、やや下が望ましい | 情報機器作業ガイドライン |
| 椅子の座面の高さ | 体形に合わせて調整でき、37cm〜43cm程度の範囲で調整できることが望ましい | 情報機器作業ガイドライン解説 |
| 室温・湿度 | 室温18℃〜28℃、相対湿度40%〜70%を目安 | テレワークガイドライン |
| 作業空間 | 設備の占める容積を除き10立方メートル以上 | テレワークガイドライン |
座り方についても、同ガイドラインは具体的に書いています。椅子に深く腰をかけて背もたれに背を十分にあて、履き物の足裏全体が床に接した姿勢を基本とすること。椅子と大腿部の膝側背面との間には手指が押し入る程度のゆとりがあり、大腿部に無理な圧力が加わらないようにすること。床に足が着かない場合は、十分な広さがあり滑りにくい足台を必要に応じて備えること。
測る道具は手持ちで足りる
照度計を買わなくても、スマートフォンの照度計アプリでおおよその桁は分かります。視距離はメジャーがなければ、A4用紙の長辺がおよそ29.7cmなので、それより一回り遠いかどうかで判断できます。画面の高さは、背もたれに背をつけてまっすぐ前を見たとき、視線の先が画面の上端付近に来るかどうかで確認します。
明るさが足りない場合の直し方は在宅ワークの照明・明るさの整え方に、視距離を確保するための机の奥行きは在宅ワークのデスクは奥行き何センチ必要かにまとめています。室温・湿度が季節で崩れるときは在宅ワークの寒さ・暑さ対策もどうぞ。
なお、足・座面・机・目線を下から順に合わせる手順は在宅ワークの姿勢の整え方で通しで解説しています。ここが崩れていると、以降の部位別の対策はどれも効きにくくなります。
部位①:腰
何が起きているか:腰は座り方の影響を最も受けやすい部位です。浅く座って背もたれを使っていない、座面が高すぎて足裏が床から浮いている、逆に低すぎて膝が持ち上がっている、といった状態が続くと、腰まわりに負担が集中しやすくなります。
買わずにできること:まず座面の高さを、足裏全体が床に着き、太ももが床とおおむね平行になる位置に合わせます。次に深く腰をかけて背もたれに背を当て、腰の反りが背もたれに支えられているかを確認します。足が床に届かないときは、手元にある箱や雑誌の束を足台の代わりにして高さを試してから、正式な足台を検討します。
環境で直すところ:椅子の調整だけで足りるかは、下から順に触ると判断しやすくなります。触る順番は在宅ワークで腰が痛いときの椅子の調整にまとめました。背もたれの当たりが浅いまま変えられない椅子であれば、腰用とお尻用を分けて考えるのが近道です(椅子用クッションの選び方)。
部位②:肩・首
何が起きているか:肩は、頭と腕の重さを支え続けることで負担がたまります。ポイントは、肩はキーボードを打って疲れるのではなく、腕を空中で支えることで疲れるという点です。首は、画面が目線より低いと頭が前に出て、その姿勢を保つために後ろ側が働き続けます。ノートパソコン単体での作業は、画面とキーボードが一体なので、どうしても目線が下がります。
買わずにできること:肘掛けの高さを、肩が上がらず腕の重さが預けられる位置に合わせます。肘掛けが調整できない場合は、机の上でキーボードを手前に引き、前腕を天板に載せられるようにするだけでも支え方が変わります。画面については、手元の本を数冊重ねて高さを試し、目線に合う高さの見当をつけてから道具を選びます。
環境で直すところ:腕の預け方は在宅ワークでキーボードを打つと肩が痛いときの見直し方に、目線が低いことによる首の負担はノートパソコンで肩がこるのは目線が低いからに整理しています。外付けモニターの高さ合わせはモニターの高さが合わず首が痛いとき、ノートパソコンのまま上げるならノートPCスタンドの選び方が参考になります。
部位③:目
何が起きているか:目の疲れは、画面を長時間見続けることで起こりやすく、明るさ・視距離・乾燥(まばたきの減少)の3つが関わります。ガイドラインが視距離をおおむね40cm以上、机上の照度を300ルクス以上としているのは、この3つのうち2つに直接関わる数値だからです。また、画面の明るさと周辺の明るさの差が大きいと眼の負担が大きくなるため、その差はなるべく小さくすることとされています。
買わずにできること:画面の輝度を、周囲の明るさと見比べて下げすぎ・上げすぎがないか確認します。窓から直射光が入る場合は、ガイドラインどおりブラインドやカーテンで調整します。休憩のときにスマートフォンを見続けると目の休憩になりません。画面から離れて遠くを見る、というのが小休止の本来の使い方です。
環境で直すところ:明るさ・距離・乾燥の観点でまとめた在宅勤務で目が疲れない環境づくりが入口です。手元だけが暗い場合は在宅ワークで手元が暗く目が疲れるときのデスクライトの選び方、休憩時間の使い方を変えたい場合は在宅ワークのホットアイマスクの選び方もあります。
部位④:手・手首
何が起きているか:手や手首は、マウスとキーボードの操作で負担がたまります。手首をひねった状態が続く、手全体を大きく動かし続ける、キーを強く叩き続ける、といった使い方が疲れにつながりやすいと言われます。ガイドラインもキーボードとディスプレイは分離して位置を調整できること、操作しやすいマウスを使うことを挙げています。
買わずにできること:マウスの移動量が大きいと感じるなら、まずポインタ速度の設定を上げて、腕ごと動かす量を減らします。キーボードは、手前に引きすぎず、肘が体の横に自然に落ちる位置に置きます。ノートパソコンの内蔵キーボードで肩が開かないときは、外付けを一時的に別の位置に置いて試すだけでも違いが分かります。
環境で直すところ:マウスの疲れには種類があり、原因ごとに合う形が変わります(在宅ワークで疲れないマウスの選び方)。肩を開いて手首の角度を減らしたい場合は分割キーボードとエルゴノミクスキーボードの選び方が参考になります。
部位⑤:足(むくみ・冷え)
何が起きているか:足は、長時間座って下半身の血流が滞ることで、むくみや冷え、だるさを感じやすくなる部位です。座位行動を30分ごとに中断することが重要とされているのは、この血流の問題と関係が深い部分です。加えて、足元だけが冷える環境だと、体感としての疲れが増えやすくなります。
買わずにできること:座ったままでも、かかとを上げ下げする、足首を回す、といった小さな動きを1時間に数回入れます。足裏が床に着いていない場合は足台を用意します(前述の箱でも代用できます)。足元に冷たい風が直接当たっていないかも確認します。
環境で直すところ:夕方の足のむくみが気になる場合の考え方は在宅ワークで夕方に足がむくむときに、立ち作業を試して座位時間そのものを減らすなら卓上昇降台の選び方や疲労軽減マットの選び方が参考になります。
原因を1週間で切り分ける「引き算テスト」
ここからがこの記事の本題です。対策を並べた記事は多いのですが、どれが自分に効いたのかを確かめる手順はあまり書かれていません。同時に3つ変えると、効いた要因も、無駄になった出費も分からなくなります。
やり方はシンプルで、変える項目を1つに絞り、期間を区切り、元に戻せる形で試すだけです。
| 週 | 変える項目 | 具体例 | 記録するもの |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 何も変えない(基準の測定) | いつもどおり働く | 終業時の部位別つらさ、連続作業の最長時間 |
| 2週目 | 時間だけ変える | 30分ごとに立つ、1時間で画面から離れる | 同上 |
| 3週目 | 姿勢だけ変える | 座面高と背もたれの当たりを合わせる | 同上 |
| 4週目 | 高さだけ変える | 画面の上端を目線の高さに合わせる | 同上 |
| 5週目 | 明るさだけ変える | 手元と画面の明るさの差を小さくする | 同上 |
記録は一言で構いません。腰3・肩1・目2、のように部位ごとに3段階で置くだけでも、週をまたいで比べれば傾向が見えます。
このテストには3つの効き目があります。ひとつ目は、効かなかった対策に投資し続けるのを止められること。ふたつ目は、本当に必要な道具だけが残ること。みっつ目は、変化がまったく出ない場合に、作業環境以外の要因かもしれないと早く気づけることです。休んでも取れないだるさが続くなら、環境の調整を続けるより医療機関に相談するほうが確実です。
順番を時間→姿勢→高さ→明るさにしているのは、費用がかからず、元に戻しやすい順だからです。時間の区切りは費用ゼロで今日から変えられ、姿勢は今の椅子の調整で試せます。高さと明るさは道具が必要になることがあるので後ろに置いています。
筆者の判断基準:どこまで調整で粘り、どこから買い替えるか
道具を足すかどうかは、次の3段階で考えています。段階を飛ばすと、買ったのに変わらない、という結果になりやすいためです。
第1段階:今あるもので調整する。椅子の座面高、背もたれの角度、肘掛けの高さ、画面の輝度、キーボードとマウスの位置。ここは費用がかからず、失敗しても元に戻せます。引き算テストの2〜3週目で変化が出るなら、この段階で止めてよいと考えています。
第2段階:足りない機能だけを足す。第1段階をやり切っても、調整の余地そのものが無い場合に進みます。判断の目安は、今の道具にその調整機能が付いていないことがはっきりしている、という点です。足が床に着かないのに座面が下がりきっている(足台)、背もたれが腰に当たらない(クッション)、画面が上がらない(スタンドやモニター台)、手首の角度が変えられない(マウスやキーボード)といったケースです。この段階では、1つ足して2週間試してから次を考えます。
第3段階:本体を買い替える。第2段階の追加でも解決しない、あるいは追加品を重ねると机の上が使えなくなる場合に限ります。目安は、ガイドラインが挙げる椅子の要件(座面の高さが調整できる、適当な背もたれがある、必要に応じて肘掛けがある、安定していて容易に移動できる)のうち、複数が構造的に満たせないときです。ここまで来て初めて、椅子や机の買い替えを検討します。
段階を上げる前に確認しているのは次の3点です。
- 引き算テストで、その部位が本当に主因だと確かめたか(つらさの記録が他の部位より明確に高いか)
- 今の道具に、その調整機能が本当に無いか(説明書を見ずに無いと判断していないか)
- 足したものを置くスペースが机の上にあるか(買ってから置けないことに気づくのが一番もったいない)
マッサージ器のような回復側の道具は、この3段階とは別枠で考えています。作業中の負担そのものを減らすものではないため、環境の見直しを終えてから、それでも残る張りに対して足すという順番です(在宅ワークの肩・首マッサージ器の選び方)。順番を逆にすると、原因が残ったまま回復だけを重ねることになります。
気持ちの疲れも「全身」に乗ってくる
体の対策だけでは説明がつかないだるさもあります。在宅では仕事と生活の場所が同じで、オンオフの区切りが弱くなりがちです。終業後も机の前に座り続ける、休憩でもスマートフォンで仕事関連の情報を見る、といった状態が続くと、体を休めているつもりで負荷が続きます。
作業環境の側からできることは、場所と時間で区切りを作ることです。終業時に机の上を片づけて仕事道具を視界から外す、作業スペースと休憩スペースを分ける、終業時刻をタイマーで固定する、といった方法があります。テレワークガイドラインでも、疲労やストレスの解消のために体操やストレッチを適切に行うことができる空間があるか、という観点がチェックリストに含まれています。
副業と本業を掛け持ちしている場合は、負荷の総量そのものが増えている可能性もあります。線の引き方は副業で疲れて本業に集中できないときのセーブラインの決め方にまとめました。
よくある質問
30分ごとに立つのを忘れてしまいます
意志で覚えておこうとすると続きません。タイマーで音を鳴らす、通話を立って受ける、飲み物を離れた場所に置く、といった外側のきっかけに置き換えるのが現実的です。それでも忘れる場合は、まず1時間ごとの区切り(ガイドラインの一連続作業時間)だけを守り、慣れてから30分ごとの小さな中断を足すと定着しやすくなります。
高機能な椅子を買えば全身の疲れは解決しますか
椅子は腰と座り方に関わりますが、目・手首・足の原因は別にあります。ガイドラインが照度・視距離・画面の高さ・作業時間まで含めて示しているのは、要因が複数あるからです。買い替えを検討するとしても、まずは今の椅子の調整と作業時間の区切りを試し、どこが主因かを確かめてからのほうが、選ぶ基準もはっきりします。
ストレッチやマッサージ器で疲れは取れますか
体を動かすこと自体は、身体活動・運動ガイド2023でも推奨されている範囲の話です。ただし、感じ方には個人差があり、ここで断定的なことは書けません。確かなのは、作業中の負担を減らす対策と、作業後の回復の対策は別物だということです。負担が大きいまま回復だけを足しても、翌日また同じ状態に戻ります。順番としては環境の見直しが先で、それでも残る張りに回復側を足す、と考えるのが無理がありません。なお、休んでも取れない痛みやしびれが続く場合は、自己判断で対処せず医療機関に相談してください。
参照した公式情報(取得日)
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインと解説」(令和元年7月12日付け基発0712第3号、令和3年12月1日一部改正)/https://www.mhlw.go.jp/content/000539603.pdf(2026年9月7日取得)
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」パンフレット/https://www.mhlw.go.jp/content/tw_guideline.pdf(2026年9月7日取得)
- 厚生労働省健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023推奨シート:成人版(e-ヘルスネット)/https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html(2026年9月7日取得)
- 厚生労働省健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(座位行動の考え方)/https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/policy/p-005.html(2026年9月7日取得)
まとめ:全身ではなく、部位で切り分ける
「全身が疲れる」は、部位に分けると見直す場所がはっきりします。この記事の要点を並べておきます。
- 共通の土台①(時間):一連続作業は1時間を超えず、10分〜15分の作業休止と1分〜2分の小休止を挟む。血流の観点では30分ごとの中断も意識する
- 共通の土台②(環境):机上300ルクス以上、視距離おおむね40cm以上、画面上端は目線と同じかやや下、座面は足裏が床に着く高さ、室温18℃〜28℃・湿度40%〜70%
- 腰:椅子の調整を下から順に
- 肩・首:腕の重さを預ける・画面の高さを上げる
- 目:明るさの差を小さく、休憩は画面から離れる
- 手・手首:入力機器の形と位置を見直す
- 足:座位を中断する、足裏を床に着ける
- 切り分け:1週間ごとに1項目だけ変えて記録する
- 買う判断:調整→機能追加→買い替えの順に、段階を飛ばさない
まずは「自分はどこがつらいか」を一つ選び、その部位の対策から試してみてください。環境全体の見直しは在宅ワーク環境を快適にする方法にまとめています。繰り返しになりますが、休んでも取れない痛み・しびれ・強いだるさが続くときは、医療機関に相談してください。


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