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昇降デスクを調べていると、「買ったけれど結局上げていない」「思ったより場所を取る」といった話にたいてい行き当たります。安い買い物ではありませんし、いったん置いてしまえば簡単には戻せません。買うべきなのか、それとも自分には要らないのか。そこで手が止まっている方は多いはずです。
先に結論をお伝えします。昇降デスクが要るかどうかは、製品の良し悪しではなく、いまの自分の働き方で決まります。同じ製品でも、1日の大半を席に張り付いて過ごす人には意味が出ますし、会議で1時間おきに姿勢が変わる人にはほとんど出番がありません。
そこでこの記事では、どの製品が良いかという話はしません(電動タイプの製品選びは電動昇降デスクの選び方にまとめてあります)。代わりに、働き方から機械的に答えが出る4つの質問を用意しました。答え合わせをすると、「いらない」「卓上で試す」「買う」の3つのどれかに振り分けられます。
「いらない」と言われるのは、製品のせいではない
まず、後悔の中身を分解しておきます。よく挙がる不満は、だいたい次の4つに整理できます。
- 結局、上げなくなった:上げ下げのきっかけが働き方の中に無く、座ったまま1日が終わる
- 立ちっぱなしがつらい:立ち作業に切り替えたものの、足裏や腰のほうが先に音を上げる
- 上げると机の上が落ち着かない:天板ごと動くので、載っているものが揺れる、ケーブルが突っ張る
- 部屋の中で存在感が大きい:脚が太くて下に物を置きにくい。上げるには手前に立つスペースも要る
並べてみると分かるとおり、どれも製品の欠陥の話ではありません。働き方と部屋の条件に、昇降という機能が噛み合わなかったという話です。
ここで押さえておきたいのは、そもそも何のために立つのか、という点です。厚生労働省の情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインでは、作業区分に応じて、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分から15分の作業休止時間を設け、さらに一連続作業時間内にも1回から2回程度の小休止を設けるよう示されています。
つまり公的に求められているのは連続作業を区切ることであって、その手段が昇降デスクだとは書かれていません。席を立って歩く、聞き役の会議は立って受ける、飲み物を取りに行く。区切りの作り方はいくらでもあります。
昇降デスクは、その区切りを机の前から動かずに作れる道具です。立ち作業そのものに健康上の効果があると言い切れるわけではありませんし、立ちっぱなしには立ちっぱなしの負担があります。感じ方にも個人差があります。だからこそ「立てば体に良いのか」ではなく、自分の1日に、区切りを作りにくい時間帯があるかで考えたほうが判断がぶれません。
以下の4つの質問は、そのための材料です。メモを取りながら答えてみてください。
質問①:席を離れずに続く作業が、1日に何本あるか
最初の質問は、時間の使われ方です。1時間を超えて席を離れないまま続く作業が、1日に何本あるかを数えてください。
オンライン会議や電話が多い人は、そもそも1本あたりが短く、間に立ったり画面から目を離したりする機会が自然に挟まります。一方、資料作成・コーディング・動画編集のように、始めたら2時間3時間と席を離れない作業を毎日何本も抱える人は、区切りが働き方の中に存在しません。
目安はこうです。
- 0〜1本:区切りはすでに足りています。昇降デスクの必要度は低い側
- 2本以上:座り続ける時間帯がはっきりある。検討する価値があります
ここで、立てないほど忙しいことと、席を立っても仕事が止まらないことは別だという点に注意してください。少し中断しても平気な人は、タイマーを鳴らして立つだけで足ります。立てないのは物理的な理由ではなく、立つと集中が戻らなくなるからだという人ほど、机の前で姿勢を変えられる昇降デスクの出番が出てきます。
質問②:机の上のものを、そのまま持ち上げていいか
2つめは机の上の状態です。ここを見落とすと、買ってから上げなくなります。
昇降デスクは天板ごと上下します。つまり、いま机に載っているものが全部、一緒に動くということです。確認するのは3点です。
- 重さ:モニター、モニターアーム、スピーカー、書類。その合計がメーカーの公表する耐荷重に収まるか。耐荷重は製品ごとに違うので、候補が決まったら公表値で確かめます
- 配線の長さ:電源タップが床にあると、天板を上げたときにケーブルが突っ張ります。上げ幅のぶんだけ余長があるか、タップごと天板裏に上げられるか
- 倒れやすいもの:飲み物、ペン立て、小型の観葉植物。昇降のたびに片付ける必要が出ると、面倒で上げなくなります
机の上がノートパソコンとマウス程度なら、この3点はほとんど問題になりません。逆に、モニターが複数あってケーブルが床まで下りている環境では、机ごと動かすより、いまの机の上に載せる卓上タイプのほうが噛み合うことがあります。載せる機材から耐荷重を逆算する具体的な手順は、電動昇降デスクの選び方で扱っています。
質問③:立ったときの足元と場所を、その部屋で作れるか
3つめは部屋の条件です。立ち作業は、机の高さだけでは成立しません。
- 足元:フローリングに素足やスリッパで立ち続けると、足裏と腰に負担が集まります。マットを敷くなどの手当てと、その置き場所が要ります(疲労軽減マットの選び方)
- 目線:天板を上げると画面も一緒に上がりますが、立ったときの目の高さに合うとは限りません。ガイドラインでは、ディスプレイは画面の上端が眼の高さとほぼ同じかやや下になる高さが望ましく、おおむね40cm以上の視距離を確保することとされています。座ったときと立ったときの両方でこれを満たせるか、モニター側の高さ調整幅もあわせて見ておきます(在宅ワークの姿勢の整え方)
- 占有スペース:昇降デスクは脚部が太く、下に収納を置きにくい構造が多いです。さらに、天板を上げて使うには手前に人ひとり分の空間が要ります
この3つが作れない部屋では、機能があっても使われません。買っても上げないのは意志の問題ではなく、場所の問題であることが多いのです。
質問④:立ちたい作業を、机の前以外でできないか
4つめは、いちばん見落とされやすい質問です。立ってやりたい作業は、そもそも机の前でなくてもいいのではないか、という視点です。
1日の作業を並べてみると、画面を2枚使う作業と、そうでない作業に分かれるはずです。
- 通話やオンライン会議の聞き役
- 資料や記事を読む
- メール・チャットの返信
- 考えをまとめる、メモを書く
これらはノートパソコン1台、あるいは手ぶらでも成立します。家の中にキッチンカウンター、ダイニングテーブルの端、窓辺のカウンターのように、立ったまま手を置ける高さの場所があるなら、その作業だけを持っていけば区切りは十分に作れます。
移せる場所がある、かつ日常的にノートパソコン中心で作業している。この2つが揃うなら、昇降デスクを買わないという判断はかなり有力な選択肢になります。逆に、デスクトップ機やモニター複数枚が前提で持ち出せない人は、机の前で姿勢を変える方法を探すことになります。
4つの答えを、いらない/卓上で試す/買う に振り分ける
ここまでの答えを、次の表に当てはめてください。
| 分岐 | ①連続作業の本数 | ②机の上の状態 | ③足元と立つ場所 | ④机以外の立ち場所 |
|---|---|---|---|---|
| いらない | 0〜1本 | 問わない | 作れない | ある |
| 卓上で試す | 2本以上 | 重い・配線が固定 | 作れる | ない/使いにくい |
| 買う | 2本以上 | ノートパソコン中心 | 作れる | ない |
厳密な点数表ではありません。質問③で「作れない」なら、①②の答えがどうであれ買わない側に寄せてください。上げるスペースと足元の手当てが無い部屋では、機能は使われないからです。逆に③が作れるなら、①の本数が実質的な決め手になります。
いらないと判断した人がやること
買わない代わりに、区切りを別の手段で作ります。1時間ごとにタイマーを鳴らす、聞き役の会議は立って受ける、飲み物はその都度取りに行く。連続作業を区切るという点では、これで足ります。デスクまわりの居心地は、椅子・照明・足元といった別の要素でも整えられます。
卓上で試すと判断した人がやること
いまの机に載せて立ち作業を試せるのが、卓上昇降台(スタンディングデスクコンバーター)です。机を買い替えないので、合わなかったときの損失が小さく、自分は本当に上げるのかを実地で確かめられるのが大きな利点です。選び方は卓上昇降台の選び方にまとめています。数週間ためしてみて上げる回数が続くようなら、そのとき机ごとの買い替えに進めば間に合います。
買うと判断した人がやること
机ごと替える場合、最初の分かれ道は手動か電動かです。電源が要らない手動と、ボタンひとつで高さが決まる電動では、上げ下げの手間が変わり、結果として使う回数も変わります。スタンディングデスクの手動タイプの選び方と電動昇降デスクの選び方を読み比べたうえで、質問②で数えた機材の重さから耐荷重を逆算してください。
高さが合っていないだけなら、机そのものを見直すほうが早い
最後にひとつ補足です。いまの机が体に合っていない、というだけが動機なら、昇降機能は要らないかもしれません。同ガイドラインの解説では、机は高さを調整できる場合は60cmから72cm程度の範囲で調整できることが望ましく、調整できない場合は65cmから70cm程度のものが望ましいとされています。手持ちの机がこの範囲から外れているなら、高さの合う机や椅子に替えるほうが、費用も設置スペースも小さく済みます(在宅ワークのデスクの選び方)。
なお、腰や肩の不調が続いている場合は、家具を入れ替えて様子を見る前に医療機関へご相談ください。
まとめ:買わない判断も、同じくらい具体的にできる
- 質問①:席を離れずに1時間を超える作業が、1日に何本あるか(0〜1本なら必要度は低い)
- 質問②:机の上のものを丸ごと持ち上げていいか(重さ・配線・倒れやすいもの)
- 質問③:立ったときの足元・目線・立つスペースを、その部屋で作れるか
- 質問④:立ってやりたい作業を、机の前以外へ移せないか
昇降デスクは、連続作業を区切るための道具のひとつです。区切りを作る方法はほかにもありますし、部屋と働き方が噛み合わなければ、機能は使われないまま残ります。4つの質問に答えて「いらない」に着地したなら、それは我慢ではなく、自分の働き方に合った結論です。


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